バセドウ病から橋本病へ変わることがある?

バセドウ病、橋本病ってどんな病気?

バセドウ病
バセドウ病は、甲状腺が過剰にホルモンを分泌する自己免疫疾患です。甲状腺は首の前側に位置し、体の代謝やエネルギーを調整するために必要なホルモン(T3、T4)を生成します。バセドウ病では、免疫システムが誤って甲状腺を攻撃し、過剰なホルモンが生成され、代謝が異常に活発になります。その結果、動悸や手の震え、体重減少、疲労感、暑がりなどの症状が現れます。バセドウ病は特に20〜40代の女性に多く見られますが、男性や子どもにも発症することがあります。
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)
 
橋本病
橋本病(慢性甲状腺炎)は、バセドウ病とは逆に、甲状腺ホルモンの分泌が不足する自己免疫疾患です。橋本病では、免疫システムが甲状腺を攻撃し続けることで、甲状腺が徐々に機能しなくなります。これにより、甲状腺ホルモンの生成が減少し、甲状腺機能低下症を引き起こします。主な症状としては、疲れやすさ、体重増加、寒がり、皮膚の乾燥、鬱状態などが見られます。橋本病は、バセドウ病と同様に女性に多く発症し、特に中年以降の女性に多く見られます。
甲状腺機能低下症(橋本病)

バセドウ病から橋本病に変わることがあるの?

実は、バセドウ病を持つ人が後に橋本病に移行するケースがあることが知られています。これは珍しいケースではありますが、実際に起こることがあります。バセドウ病と橋本病はどちらも自己免疫疾患であり、免疫システムが甲状腺に誤って攻撃を加える点で共通しています。
 
バセドウ病では、免疫システムが甲状腺を過剰に刺激し、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されます。一方、橋本病では、免疫システムが甲状腺の細胞を破壊し、ホルモンの生成が低下します。このように、バセドウ病と橋本病は免疫システムの誤作動によって発症するという点で関連が深い疾患です。そのため、バセドウ病の治療中や自然経過の中で、甲状腺機能が低下し、橋本病へと移行することがあるのです。たとえるなら、エンジンがフル回転で走りすぎた結果、エネルギーが尽きてしまい、次は動かなくなってしまうようなものです。

どうしてバセドウ病から橋本病になるの?

バセドウ病から橋本病に移行する理由には、いくつかのメカニズムが関与していると考えられています。以下に、その主な原因を解説します。
 
1. 自己免疫反応の変化
バセドウ病と橋本病はどちらも自己免疫疾患であるため、免疫システムが甲状腺に対して誤った反応を示します。しかし、時間の経過とともに、免疫系の反応が変わることがあります。バセドウ病では、甲状腺を過剰に刺激する抗体が生成されますが、免疫系が変化し、逆に甲状腺の細胞を破壊する抗体が優勢になると、橋本病へと進行することがあります。この免疫反応の変化が、バセドウ病から橋本病への移行を引き起こします。
 
2. 治療の影響
バセドウ病の治療中、抗甲状腺薬や放射性ヨウ素療法が甲状腺の過剰なホルモン分泌を抑えるために使用されます。しかし、治療によって甲状腺の機能が過度に抑制され、結果的に甲状腺ホルモンが不足する状態(甲状腺機能低下症)に移行することがあります。特に、放射性ヨウ素療法や手術で甲状腺を部分的に除去した場合、ホルモン分泌が減少し、橋本病のような甲状腺機能低下状態になることがあります。
 
3. 遺伝的要因
バセドウ病と橋本病のどちらも遺伝的な要因が関与していると考えられています。遺伝的に自己免疫疾患を発症しやすい体質の人は、免疫システムの誤作動が複数の形で現れることがあり、バセドウ病と橋本病の両方のリスクを持っている可能性があります。そのため、一つの疾患からもう一方の疾患へと移行することもあります。
 
4. 加齢による影響
加齢に伴い、免疫システムの働きが変化することが知られています。免疫系が年齢とともに変化することで、バセドウ病から橋本病への移行が促進される場合があります。特に、中年以降の女性は、甲状腺機能が低下しやすく、橋本病のリスクが高まることがあります。

当院でのサポート

当院では、バセドウ病や橋本病に対する専門的な診療とサポートを提供しています。どちらの病気も、甲状腺の健康を守るために継続的な管理が必要です。特に、バセドウ病から橋本病へと移行する可能性がある患者様には、適切な診断と治療を通じて、甲状腺機能の変化に対応することが重要です。
 
1. 専門的な診断と検査
当院では、甲状腺ホルモンのバランスを確認するために定期的な血液検査を実施しています。バセドウ病や橋本病の症状が現れた際には、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、フリーT3、フリーT4の数値を測定し、甲状腺機能の状態を正確に把握します。また、甲状腺の抗体検査も行い、免疫システムの異常を確認します。
 
2. 個別に合わせた治療プラン
バセドウ病や橋本病の治療は、患者様一人ひとりの症状や病状に合わせたオーダーメイドのプランが重要です。当院では、抗甲状腺薬やホルモン補充療法など、患者様の状況に応じた治療法を提案し、治療の効果をモニタリングしながら最適な治療を提供します。
 
3. 継続的なフォローアップ
甲状腺機能の変化を見逃さないために、定期的なフォローアップを行い、患者様が安定した状態を保てるようにサポートしています。甲状腺ホルモンのバランスが変わった場合にも、迅速に対応し、適切な治療を提供します。

 

まとめ

 

バセドウ病と橋本病は、いずれも甲状腺に影響を与える自己免疫疾患です。バセドウ病から橋本病へ移行することは稀ではありますが、可能性があるため、適切な管理と診断が重要です。自己免疫反応の変化や治療の影響、遺伝的要因などがバセドウ病から橋本病へと移行する原因となります。バセドウ病や橋本病に関連する症状を感じた場合は、早めに医師に相談し、甲状腺の健康を守るための対策を講じることが重要です。
 
当院では、バセドウ病や橋本病の患者様に対して、専門的な診療と治療を提供しており、長期的な健康管理をサポートしています。バセドウ病や橋本病に関する不安や疑問がある方は、ぜひ当院にご相談ください。
 
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監修者プロフィール  
院長 山田 朋英 (Tomohide Yamada)  
医学博士 (東京大学)
 
山田院長は、糖尿病・甲状腺・内分泌内科の専門医であり、東京大学で医学博士号を取得しています。東大病院での指導医としての経験や、マンチェスター大学、キングスカレッジロンドンでの客員教授としての国際的な研究経験を持ち、生まれ故郷の蒲田でクリニックを開院しました。
 
資格・専門性
- 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・研修指導医  
- 日本内科学会 総合内科専門医  
 
豊富な臨床と研究の経験を活かし、糖尿病や甲状腺疾患における最新の治療を提供しています。
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