足の裏が熱く感じるのは糖尿病のせい?

糖尿病ってどんな病気?

 

糖尿病は、体が血糖値(血中のグルコース)を正常にコントロールできなくなる病気です。通常、食事をすると体内で糖が消化され、エネルギー源として使用されますが、糖尿病の患者では、体内のインスリンがうまく機能しないか、インスリンの分泌が不足するため、血糖値が正常に下がらず、高血糖の状態が続きます。

糖尿病には主に2つのタイプがあります:

  • 1型糖尿病:インスリンを作る膵臓の細胞が自己免疫により破壊され、インスリンがほとんど、または全く作れなくなります。このため、患者は生涯にわたりインスリン注射が必要です。

  • 2型糖尿病:主に生活習慣が原因で、インスリン抵抗性が生じ、体がインスリンに反応しにくくなります。このタイプの糖尿病は、中年以降に多く見られますが、最近では若年層にも広がっています。

糖尿病は放置しておくと、様々な合併症を引き起こすリスクが高まります。その一つに、足の裏に熱さや異常な感覚を感じる「糖尿病神経障害」があります。この症状は、多くの糖尿病患者が経験するものの一つであり、早期に発見し、適切な治療を行うことが非常に重要です。

ふくらはぎがつるのは糖尿病が原因かも?

 

なぜ足の裏が熱く感じるの?

糖尿病患者が足の裏に熱さや灼熱感を感じる原因は、糖尿病神経障害によるものです。糖尿病神経障害は、長期間にわたる高血糖が原因で、神経にダメージを与える合併症の一つです。この障害が進行すると、特に足や手などの末端部分に異常な感覚を引き起こすことが多く、これを「末梢神経障害」と呼びます。

糖尿病神経障害は、次のような症状を引き起こします:

  • 足の裏が熱く感じる:灼熱感やチクチク感があり、時には痛みを伴うこともあります。
  • 感覚の鈍化:痛みや熱さに対する感覚が鈍くなり、通常の刺激を感じにくくなります。
  • しびれ:特に足先にかけてしびれを感じることがあり、長時間続くこともあります。

なぜこれが起こるかというと、持続的な高血糖状態が神経を囲む小さな血管にダメージを与えるためです。その結果、神経への酸素や栄養の供給が不足し、神経が劣化していきます。これにより、神経は正常に働かなくなり、熱さや痛みを異常に感じたり、逆に感覚が鈍くなったりします。

足の裏が熱く感じたらどうするべき?

もし足の裏に熱さや異常な感覚を感じた場合、まずは早急に医療機関を受診することが大切です。糖尿病神経障害は進行性であり、適切な対策を取らなければ症状が悪化し、最終的には足の潰瘍や壊疽(えそ)といった深刻な状態に進行する可能性があります。以下のポイントを念頭に、対策を取っていきましょう。

1. 血糖値の管理を徹底する

糖尿病神経障害の進行を防ぐためには、まず何よりも血糖値の適切なコントロールが必要です。高血糖状態が続くと神経へのダメージが増し、症状が悪化します。食事療法や運動療法、薬物療法を継続的に行い、血糖値を目標範囲内に保つよう努めましょう。

2. 足のケアを怠らない

糖尿病患者は足のケアが非常に重要です。糖尿病神経障害によって感覚が鈍くなると、足にできた傷や感染に気づきにくくなります。日常的に足を確認し、傷や異常がないかチェックし、発見した場合はすぐに医師に相談するようにしましょう。

3. 痛みや灼熱感に対する治療

足の裏の熱さや痛みを感じる場合、症状を緩和するための治療法がいくつかあります。鎮痛剤や神経痛を和らげる薬が処方されることがあり、医師と相談して適切な治療法を選ぶことが大切です。

糖尿病神経障害の予防と治療

糖尿病神経障害の予防と治療は、糖尿病全体の管理に密接に関連しています。ここでは、神経障害を予防し、進行を遅らせるための主要なポイントを紹介します。

1. 血糖値のコントロール

最も基本的な予防策は、血糖値の正常範囲内での管理です。血糖値が高くなると神経障害が進行しやすくなるため、日々の血糖管理が重要です。糖尿病の治療計画に基づき、食事の管理、運動、薬の服用を適切に行うことが大切です。

2. 適切な生活習慣

糖尿病神経障害の予防には、生活習慣の改善が不可欠です。特に禁煙は非常に重要です。タバコは血管を収縮させ、血液の流れを悪くするため、神経への酸素供給が妨げられ、症状を悪化させる要因となります。さらに、定期的な運動を行うことで、血糖値のコントロールが改善し、神経の健康を保つことができます。

3. 薬物療法

神経障害の治療には、特定の薬が処方されることがあります。鎮痛剤や抗てんかん薬、抗うつ薬などが神経の痛みを軽減するために使用されることが多いです。症状が進行している場合は、医師と相談のうえで薬物療法を検討しましょう。

4. 定期的な検診

糖尿病患者は定期的な検診を受けることが大切です。特に、足や手の感覚に異常がないか、糖尿病神経障害が進行していないかを確認するために、神経学的検査を受けることをお勧めします。

 

当院でのサポート

 

当院では、糖尿病の診断から治療、合併症予防に至るまで、包括的なサポートを提供しています。糖尿病神経障害やその他の合併症を予防するために、専門的な診療を通じて患者様一人ひとりに合った治療プランを提案します。

1. 詳細な診断

足の裏に熱さや痛みを感じる場合、当院では詳細な神経学的検査を行い、糖尿病神経障害が疑われる場合には迅速に診断を行います。血糖値の測定や神経伝達速度検査などを用いて、神経の状態を正確に評価します。

2. 血糖コントロールの支援

糖尿病神経障害の進行を防ぐためには、血糖値の管理が非常に重要です。当院では、食事指導や運動療法のアドバイス、薬物治療の調整を行い、血糖値の安定化を目指します。患者様のライフスタイルに合わせた治療プランを提供します。

3. 足のケア指導

糖尿病患者にとって、足のケアは非常に重要です。当院では、患者様に足のセルフチェック方法を指導し、適切なケアを行うことで、足の健康を維持するためのサポートを行っています。また、必要に応じて、専門的なフットケアを提供しています。

4. 継続的なフォローアップ

糖尿病神経障害は進行性の合併症であるため、定期的なフォローアップが欠かせません。当院では、患者様の状態を定期的に確認し、必要に応じて治療方針の見直しを行っています。患者様一人ひとりに寄り添い、長期的なサポートを提供いたします。


監修者プロフィール

院長 山田 朋英 (Tomohide Yamada)
医学博士 (東京大学)

山田院長は、糖尿病・甲状腺・内分泌内科の専門医であり、東京大学で医学博士号を取得しています。東大病院での指導医としての経験や、マンチェスター大学、キングスカレッジロンドンでの客員教授としての国際的な研究経験を持ち、生まれ故郷の蒲田でクリニックを開院しました。

資格・専門性

  • 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・研修指導医
  • 日本内科学会 総合内科専門医

豊富な臨床と研究の経験を活かし、糖尿病や甲状腺疾患における最新の治療を提供しています。

TOPへ