チラーヂンで痩せる?その効果と正しい使い方

チラーヂンってどんな薬?

「チラーヂン」という薬を飲むと痩せるのではないかと考える方がいるかもしれません。チラーヂンは、甲状腺の病気を治療するための薬ですが、体重にどのような影響を与えるのでしょうか。このページでは、チラーヂンと体重の関係について、わかりやすく説明します。
チラーヂン(一般名:レボチロキシン)は、甲状腺ホルモンを補うための薬です。甲状腺ホルモンは、体の代謝をコントロールする重要な役割を担っており、体温の維持、心拍数の調整、エネルギー消費の促進など、さまざまな生理機能に影響を与えます。しかし、甲状腺の働きが低下して十分なホルモンが生成されない状態(甲状腺機能低下症)になると、体内の代謝が遅くなり、体重増加、疲労感、寒がりなどの症状が現れることがあります。
 
チラーヂンは、こうしたホルモン不足を補い、体の代謝を正常に保つために処方される薬であり、特に甲状腺機能低下症の治療に広く使われています。甲状腺機能低下症の治療において、チラーヂンは欠かせない薬です。
 
たとえるなら、チラーヂンは「エンジンオイル」を追加して、車(体)のエンジンがスムーズに動くようにする役割を果たします。

チラーヂンで痩せることがあるの?

チラーヂンを服用すると痩せるという話を耳にすることがありますが、それは甲状腺機能低下症の患者に限った話です。甲状腺ホルモンが不足している状態では、体の代謝が著しく低下し、エネルギー消費が減少するため、体重が増えやすくなります。チラーヂンを服用し、ホルモンバランスを整えることで、代謝が正常化され、体重が減少することがあるのです。
 
チラーヂンが体重に与える影響
チラーヂンによる体重減少は、ホルモンのバランスが回復した結果として生じるものです。しかし、甲状腺機能が正常な人がチラーヂンを服用しても、体重が減る効果は期待できません。むしろ、健康な人が甲状腺ホルモンを過剰に摂取すると、体に悪影響を及ぼす可能性があります。
 
チラーヂンを使った「ダイエット」という誤った情報も見受けられますが、これは大変危険です。甲状腺ホルモンの過剰摂取は、心臓に負担をかけたり、骨密度を低下させたりするリスクがあるため、医師の指導なしに使用することは避けなければなりません。

無理にチラーヂンを使って痩せようとするのは危険です。たとえるなら、チラーヂンは「エンジンが正常に動くようにする修理道具」のようなもので、車(体)の調子を整えるのが目的です。車の調子が良くなって燃費(代謝)が良くなると、自然に体重が減ることもありますが、それが薬の主な目的ではありません。

厚生労働省 - 甲状腺の病気に関する情報
日本甲状腺学会 - 甲状腺疾患について
日本内分泌学会 - 甲状腺疾患について

チラーヂンの正しい使い方

チラーヂンは医師の処方に基づいて、適切な量を服用することが非常に重要です。服用量や服用時間を誤ると、効果が十分に発揮されなかったり、副作用が発生するリスクがあります。
 
1. 医師の指示に従う
チラーヂンの服用量は、患者の甲状腺ホルモンの状態や症状に応じて異なります。一般的には、少量から服用を開始し、定期的な血液検査で甲状腺ホルモンのレベルを確認しながら、適切な量に調整していきます。医師の指示に従い、決められた時間に決められた量を服用することが、治療の効果を最大限に引き出すポイントです。
 
2. 空腹時に服用する
チラーヂンは、食事の影響を受けやすいため、空腹時に服用することが推奨されます。特に朝、起床後に1時間程度空けてから食事をするのが一般的です。食べ物やサプリメントの一部(特にカルシウムや鉄分を含むもの)は、チラーヂンの吸収を妨げる可能性があるため、同時に服用しないよう注意が必要です。
 
3. 定期的な血液検査
チラーヂンを服用している間は、甲状腺ホルモンのレベルが正常範囲に保たれているか確認するために、定期的な血液検査が必要です。甲状腺ホルモンの過剰や不足が起こると、体にさまざまな不調が生じるため、検査結果に応じて薬の量を調整します。

ただし、甲状腺ホルモンが正常に働いている人がチラーヂンを飲んでも、効果はありませんし、むしろ体に悪影響を及ぼす可能性があります。たとえるなら、車のエンジンが正常に動いているのに、無理にオイルを追加すると逆にエンジンが壊れてしまうようなものです。

 

チラーヂンを使って健康的な体を目指そう

チラーヂンは、甲状腺ホルモンを補充し、体の代謝を正常化する薬です。しかし、チラーヂンだけで理想的な体重や健康を維持することは難しく、総合的な生活習慣の改善も必要です。以下に、チラーヂンを服用しながら健康的な体を目指すためのアドバイスをいくつか紹介します。
 
1. バランスの取れた食事
チラーヂンを服用している場合でも、健康的な食事が重要です。特に、甲状腺機能に影響を与えるヨウ素の摂取量には注意が必要です。ヨウ素は甲状腺ホルモンの生成に必要な成分ですが、過剰に摂取すると逆に甲状腺の機能が低下することがあります。ヨウ素を多く含む食品(海藻類など)は適度に摂取し、バランスの取れた食生活を心がけましょう。
 
2. 適度な運動
適度な運動は、体重管理や代謝の促進に役立ちます。チラーヂンを服用している人も、無理のない範囲で日常的に体を動かすことが大切です。ウォーキングやヨガなど、軽い運動を取り入れることで、代謝が安定し、健康維持に繋がります。
 
3. ストレス管理
ストレスは甲状腺ホルモンのバランスにも影響を与えるため、適切なストレス管理が重要です。リラクゼーション法や趣味を楽しむ時間を確保し、心と体の健康を保つことが、チラーヂンの効果を最大限に引き出すためにも役立ちます。

当院でのサポート

 

当院では、甲状腺機能低下症や甲状腺疾患を抱える患者様に対して、包括的なサポートを提供しています。チラーヂンを使用している患者様が安全かつ効果的に治療を続けられるよう、専門医による診察とフォローアップを行っています。
 
1. 専門医による適切な処方
当院では、患者様の甲状腺機能をしっかりと評価した上で、チラーヂンの適切な処方を行います。血液検査を定期的に実施し、甲状腺ホルモンの状態を確認しながら、最適な服用量を決定します。また、体重や代謝に関するお悩みについても、患者様一人ひとりに合わせたアドバイスを提供しています。
 
2. 長期的なフォローアップ
チラーヂンは、甲状腺機能が正常化されるまで継続的に使用することが求められます。当院では、患者様が長期的に安心して治療を続けられるよう、定期的なフォローアップを行い、必要に応じて治療計画を調整しています。体重や代謝の変化に関する不安があれば、いつでもご相談ください。当院では、当日30分から40分で甲状腺ホルモンの結果が出る検査機器を導入しております。合わせて原則として当日に甲状腺超音波検査ができる体制を整えております。
 
3. 生活習慣のアドバイス
甲状腺の健康には、生活習慣も大きな影響を与えます。当院では、バランスの取れた食事や適度な運動、ストレス管理の重要性を患者様にお伝えし、総合的な健康管理をサポートします。日常生活でのアドバイスやサポートを通じて、患者様が健康的な体を維持できるようお手伝いしています。
 
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まとめ
 
チラーヂンは、甲状腺ホルモンを補充するための重要な薬であり、甲状腺機能低下症の治療において非常に効果的です。甲状腺ホルモンのバランスを回復することで、体の代謝が正常化され、体重管理がしやすくなる場合もありますが、チラーヂンを痩せ薬として使用するのは誤りです。健康的な体重管理には、バランスの取れた食生活や運動、ストレス管理が不可欠です。
 
当院では、チラーヂンの適切な使用方法や甲状腺機能に関する包括的な治療を提供しています。甲状腺に関するお悩みがある方や、チラーヂンの使用について相談したい方は、ぜひ当院にご相談ください。
 
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監修者プロフィール  
院長 山田 朋英 (Tomohide Yamada) 
医学博士 (東京大学)
 
山田院長は、糖尿病・甲状腺・内分泌内科の専門医であり、東京大学で医学博士号を取得しています。東大病院での指導医としての経験や、マンチェスター大学、キングスカレッジロンドンでの客員教授としての国際的な研究経験を持ち、生まれ故郷の蒲田でクリニックを開院しました。
 
資格・専門性  
- 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・研修指導医  
- 日本内科学会 総合内科専門医  
 
豊富な臨床と研究の経験を活かし、糖尿病や甲状腺疾患における最新の治療を提供しています。
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