尿酸値が高いとどうなるか ─ 放置しないための正しい知識

尿酸とは何か? ─ 基本の理解から始めよう

尿酸(uric acid)は、体内でプリン体が分解される際に生じる老廃物です。プリン体は、細胞の核に含まれる核酸の一部で、体内で生成されるほか、肉類や魚介類、アルコールなどの食品にも含まれています。

通常、尿酸は血液中に溶けて腎臓を通じて尿として排泄されます。しかし、産生量が多すぎたり、排泄が不十分であると血液中の尿酸値が上昇し、「高尿酸血症」となります。

一般的な基準値は以下のとおりです:

  • 男性:3.6〜7.0 mg/dL

  • 女性:2.5〜6.0 mg/dL(閉経後は上昇する傾向あり)

7.0mg/dLを超えると尿酸塩が結晶化し、関節などに沈着するリスクが高まります(参考文献1)。

尿酸値が高いとどんな病気になるのか? ─ 合併症の怖さ

1. 痛風(Gout)

最もよく知られる疾患が「痛風」です。血中の尿酸が関節に沈着し、炎症を引き起こします。特に足の親指の付け根に起こることが多く、激しい痛みを伴います。

日本では痛風の有病率は成人男性の約1〜2%とされ、尿酸値が8.0mg/dL以上の人のうち30%以上が5年以内に発症すると報告されています(参考文献2)。

2. 尿路結石

尿酸が腎臓で結晶化すると、尿路結石の原因になります。特に尿が酸性に傾いているとリスクが上がります。

3. 慢性腎臓病(CKD)

高尿酸血症は腎臓にダメージを与え、慢性腎臓病の発症リスクを2倍以上に高めるとする報告もあります(参考文献3)。

4. 高血圧・動脈硬化・心血管疾患

尿酸値の上昇は、内皮機能障害や酸化ストレスを引き起こし、心血管疾患のリスクを高める可能性があると複数の研究で示されています(参考文献4)。

なぜ尿酸値が上がるのか? ─ 原因とリスク要因の解説

尿酸値上昇の原因は、大きく以下の2つに分類されます。

1. 尿酸の過剰産生型

  • 高プリン体食(レバー、ビール、魚卵など)

  • 激しい運動や外傷

  • 白血病、乾癬などの細胞回転が活発な病態

2. 尿酸の排泄低下型(日本人に多い)

  • 腎機能低下

  • 飲酒(特にビール、日本酒)

  • 薬剤(利尿薬、低用量アスピリンなど)

  • 肥満、メタボリックシンドローム

2022年の日本痛風・尿酸核酸学会のガイドラインでは、特に肥満・糖尿病・高血圧・脂質異常症といった生活習慣病と尿酸値上昇の関連が強調されています(参考文献5)。

治療と予防のポイント ─ 尿酸値を下げるためにできること

1. 食事療法

  • プリン体の多い食品を控える

  • 水分を十分に摂取(1日2L目安)

  • アルコール制限(特にビール)

  • フルクトース(果糖)の過剰摂取も要注意

2. 生活習慣の改善

  • 適正体重の維持(BMI 25未満)

  • 有酸素運動(週150分以上)

3. 薬物療法

  • フェブキソスタット(商品名:フェブリク)

  • アロプリノール(商品名:ザイロリック)

  • ベンズブロマロン(商品名:ユリノーム)など

治療の目標値は6.0mg/dL未満とされています(日本痛風・尿酸核酸学会ガイドライン2022年版)。特に合併症のある場合は厳格なコントロールが推奨されます。

当院でのサポート

 

蒲田駅前やまだ内科糖尿病・甲状腺クリニックでは、尿酸値のコントロールに関する総合的な診療を行っています。

  • 血液検査による早期発見:定期的な尿酸測定と腎機能評価を実施

  • 生活習慣病との包括的管理:糖尿病、高血圧、脂質異常症も同時に管理し、相乗的にリスクを低下

  • 栄養指導:管理栄養士と連携し、患者様一人ひとりに適した食事プランを提供

  • 薬物治療の最適化:必要に応じて薬剤の選定や副作用の管理も含めた個別対応

痛風や尿路結石といった症状が出る前に、早期の介入が何より重要です。尿酸値が高いと指摘されたことのある方は、ぜひ一度ご相談ください。


参考文献

  1. 日本痛風・尿酸核酸学会『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版(2022年改訂版)』

  2. Richette P, Bardin T. "Gout". Lancet. 2010 Jan 23;375(9711):318-28.

  3. Obermayr RP, et al. "Elevated uric acid increases the risk for kidney disease". J Am Soc Nephrol. 2008 Dec;19(12):2407-13.

  4. Feig DI, Kang DH, Johnson RJ. "Uric acid and cardiovascular risk". N Engl J Med. 2008;359:1811-21.

  5. Nakagawa T, et al. "Hyperuricemia and its role in chronic diseases: a Japanese perspective". J Cardiol. 2020.


監修者プロフィール

院長 山田 朋英 (Tomohide Yamada)
医学博士(東京大学)

山田院長は、糖尿病・甲状腺・内分泌内科の専門医であり、東京大学で医学博士号を取得しています。東大病院での指導医としての経験や、マンチェスター大学、キングスカレッジロンドンでの客員教授としての国際的な研究経験を持ち、20年間の専門の経験を活かし生まれ故郷の蒲田でクリニックを開院しました。

資格・専門性

  • 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・研修指導医

  • 日本内科学会 総合内科専門医

豊富な臨床と研究の経験を活かし、糖尿病や甲状腺疾患における最新の治療を提供しています。

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