橋本病ってどんな病気?
橋本病は、甲状腺に影響を与える自己免疫疾患です。甲状腺は首の前面に位置する小さな臓器で、体の代謝を調整する重要なホルモンを分泌しています。甲状腺ホルモン(T3およびT4)は、体のエネルギー消費、体温調整、心臓の働き、さらには消化機能や精神的な健康まで、多岐にわたる体の機能をサポートします。
しかし、橋本病では、免疫システムが誤って自分の甲状腺を攻撃してしまうため、甲状腺の機能が低下し、ホルモンの分泌が減少してしまいます。この結果、体全体の代謝が低下し、次のような症状が現れます。
- 慢性的な疲労感
- 体重増加
- 冷え性
- 便秘
- 抑うつ感や集中力の低下
橋本病の症状は徐々に進行することが多く、特に女性に多く見られる病気です。治療には、甲状腺ホルモンを補充する薬物療法が用いられますが、生活習慣や食生活も症状の管理に大きく影響を与えるため、特に「食べてはいけない食品」を知っておくことが重要です。
食べてはいけない食品とは?
橋本病の患者が注意すべき食品の一つが、ヨウ素を多く含む食品です。甲状腺ホルモンの生成に欠かせない栄養素として知られるヨウ素ですが、橋本病の場合、ヨウ素を過剰に摂取すると甲状腺機能をさらに悪化させるリスクがあります。
ヨウ素を多く含む食品
- 海藻類:昆布、わかめ、ひじき、もずくなどの海藻類は、ヨウ素の含有量が非常に高い食品です。特に昆布は、少量であっても過剰なヨウ素摂取につながることがあるため、摂取は控えた方が良いでしょう。
- 魚介類:魚や貝類もヨウ素を含む食品です。特に、あさりや牡蠣などの貝類、タラやサケといった魚類は注意が必要です。
- ヨウ素添加の塩:一部の国では、塩にヨウ素が添加されていることがありますが、日本ではあまり一般的ではありません。それでも、加工食品などに含まれることがあるため、成分表を確認する習慣をつけることが重要です。
大豆製品とゴイトロゲン
また、大豆製品も橋本病の患者が注意すべき食品の一つです。大豆には「ゴイトロゲン」と呼ばれる成分が含まれており、この成分が甲状腺ホルモンの生成を妨げる可能性があります。具体的には、以下の食品が挙げられます。
- 豆腐、納豆、味噌、醤油などの大豆を使用した食品
- 大豆サプリメント:特にサプリメントでの摂取は、大豆の成分が高濃度になるため、注意が必要です。
ゴイトロゲンは生の状態で特に影響を与えやすいため、加熱することでその影響を軽減できますが、それでも大量に摂取することは避けた方が良いでしょう。
たとえるなら、エンジンが弱っている車に、過剰な燃料を入れすぎてしまうと、逆に調子が悪くなるのと同じです。ヨウ素を過剰に摂ると、体のバランスが崩れてしまうことがあります。
どうしてヨウ素を避けるべきなの?
橋本病の患者がヨウ素を過剰に摂取することは、甲状腺に悪影響を与える可能性があるため、注意が必要です。一般的に、ヨウ素は甲状腺ホルモンの生成に欠かせない栄養素ですが、橋本病の場合、甲状腺の自己免疫反応がホルモンの正常な生成を妨げているため、過剰なヨウ素摂取は逆効果になることがあります。
ヨウ素の役割と過剰摂取の影響
甲状腺はヨウ素を使ってホルモンを生成しますが、橋本病のような甲状腺機能低下症の患者は、すでにホルモンの生成が低下しています。そのため、ヨウ素を多く摂取すると、甲状腺が過剰に刺激され、炎症を悪化させたり、症状が悪化する可能性があります。
また、過剰なヨウ素摂取は、甲状腺が正常に機能する能力をさらに低下させることがあり、甲状腺ホルモンのバランスが崩れるリスクが高まります。このため、ヨウ素の摂取量をコントロールすることは、橋本病の症状管理において重要なポイントです。
大豆製品の影響
大豆に含まれるゴイトロゲンも、甲状腺の働きを抑制する可能性があります。ゴイトロゲンは、ヨウ素の吸収を妨げ、甲状腺の機能をさらに低下させることがあるため、特にヨウ素不足の状態での大豆製品の摂取は避けるべきです。加熱することでゴイトロゲンの影響は減少しますが、適度な摂取量を守ることが大切です。
じゃあ何を食べたらいいの?
橋本病の患者にとって重要なのは、ヨウ素やゴイトロゲンの摂取を避けながらも、バランスの取れた食事を心がけることです。食事管理によって、甲状腺機能の低下を最小限に抑え、体全体の健康を維持することができます。ここでは、橋本病の患者に適した食品をいくつか紹介します。
ビタミンDやカルシウムを豊富に含む食品
橋本病は、骨の健康にも影響を与えることがあり、特に骨密度が低下するリスクがあります。ビタミンDやカルシウムを豊富に含む食品を積極的に摂取することで、骨の健康を維持することが重要です。
- 乳製品:牛乳、ヨーグルト、チーズなど
- 葉物野菜:ほうれん草やケールなど、カルシウムが豊富な野菜
- 卵黄、魚介類:ビタミンDが豊富に含まれていますが、ヨウ素の少ない魚介類を選ぶことがポイントです。
セレンを含む食品
セレンは、甲状腺機能をサポートする重要なミネラルです。セレンは抗酸化作用を持ち、甲状腺の炎症を抑える効果があります。セレンを含む食品を積極的に取り入れると、甲状腺の健康に寄与することが期待できます。
- ナッツ類(特にブラジルナッツ)
- 全粒穀物
- 魚(ヨウ素の含有量が少ないものを選ぶ)
抗酸化物質を含む食品
橋本病は、炎症が関与する病気であるため、抗酸化物質を多く含む食品を摂取することも推奨されます。抗酸化物質は、体内のフリーラジカルを中和し、細胞の損傷を防ぐ働きがあります。
- ベリー類:ブルーベリー、ラズベリー、イチゴなど
- 緑黄色野菜:ブロッコリー、キャベツ、にんじんなど
- ナッツや種子類
食事管理においては、過度に特定の食品を避けるのではなく、バランスの取れた食事を心がけ、適度な栄養素を摂取することが重要です。甲状腺に悪影響を与える可能性のある食品を避けながら、体に必要な栄養をしっかりと取り入れましょう。
当院でのサポート
当院では、橋本病の患者様に対して、包括的なサポートを提供しています。食事管理は橋本病の症状を改善する上で重要な要素であり、当院では専門的な栄養指導を行っています。患者様一人ひとりの状態に応じた食事プランを提案し、日常生活における食事管理をサポートします。
専門的な診断と治療
まず、橋本病の診断には、血液検査を通じて甲状腺ホルモンの状態を確認します。これにより、適切な治療法が決定され、ホルモン補充療法やその他の治療が開始されます。
栄養指導
当院では、栄養士や内分泌内科の専門医が連携し、患者様に最適な食事プランを提供します。甲状腺の状態に応じて、摂取すべき食品や避けるべき食品についてのアドバイスを行い、食事管理を通じて健康をサポートします。(現在はサービスの提供を停止しております)
長期的なフォローアップ
橋本病は慢性的な病気であるため、治療後も定期的なフォローアップが必要です。当院では、定期的に患者様の甲状腺機能をモニタリングし、治療の効果を確認しながら、症状の改善に向けてサポートを行います。また、食事管理においても、継続的なアドバイスを提供し、長期的な健康維持を支援します。
橋本病に関するお悩みをお持ちの方は、ぜひ当院にご相談ください。専門の医療チームが、あなたの健康を全力でサポートいたします。
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監修者プロフィール
院長 山田 朋英 (Tomohide Yamada)
医学博士 (東京大学)
山田院長は、糖尿病・甲状腺・内分泌内科の専門医であり、東京大学で医学博士号を取得しています。東大病院での指導医としての経験や、マンチェスター大学、キングスカレッジロンドンでの客員教授としての国際的な研究経験を持ち、生まれ故郷の蒲田でクリニックを開院しました。
**資格・専門性**
- 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・研修指導医
- 日本内科学会 総合内科専門医
豊富な臨床と研究の経験を活かし、糖尿病や甲状腺疾患における最新の治療を提供しています。