はじめに:甲状腺の健康と食生活の関係とは?
甲状腺は、首の前方に位置し、体全体の代謝やエネルギー消費を調整する甲状腺ホルモンを分泌する重要な器官です。このホルモンは、私たちの体の成長や発達、体温の調節、さらには心身の健康に大きく影響を与えます。甲状腺の健康を維持するためには、適切な食生活が欠かせません。
特に甲状腺ホルモンの合成には、ヨウ素やセレン、亜鉛などの特定の栄養素が必要です。これらの栄養素が不足すると、甲状腺機能が低下し、倦怠感や体重増加、寒がりなどの症状が現れることがあります。逆に、特定の食品を過剰に摂取すると、甲状腺に負担をかけることもあるため、バランスの取れた食事が重要です。
この記事では、甲状腺の健康を守るための食生活改善のポイントや、避けるべき食品について詳しく解説します。日常的に甲状腺の健康を意識し、バランスの取れた食生活を心がけることで、甲状腺機能をサポートしましょう。
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甲状腺に良い栄養素とその摂取方法
甲状腺の健康を保つためには、いくつかの重要な栄養素を適切に摂取することが必要です。ここでは、甲状腺ホルモンの合成や機能維持に欠かせない栄養素と、その摂取方法を紹介します。
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ヨウ素(Iodine)
ヨウ素は、甲状腺ホルモンの主要な成分であり、これが不足すると甲状腺機能低下症や甲状腺腫を引き起こす可能性があります。海藻類(昆布、わかめ、ひじき)や魚介類に多く含まれており、適度な摂取が望まれます。ただし、ヨウ素の過剰摂取は逆効果になることがあり、甲状腺機能亢進症や自己免疫性甲状腺炎を悪化させる可能性があるため、注意が必要です。1日の摂取量は成人で130μg程度が適切とされています。 -
セレン(Selenium)
セレンは、甲状腺ホルモンの活性化に関与する酵素の働きを助ける役割を持っています。不足すると、甲状腺ホルモンの働きが鈍り、疲労感や倦怠感を引き起こすことがあります。セレンは、ナッツ類(特にブラジルナッツ)、魚介類、全粒穀物に豊富に含まれています。適量の摂取を心がけることで、甲状腺の健康をサポートできます。 -
亜鉛(Zinc)
亜鉛は、甲状腺ホルモンの合成と分泌を助け、免疫機能を正常に保つために重要なミネラルです。亜鉛が不足すると、甲状腺機能が低下し、免疫系の異常を引き起こす可能性があります。亜鉛は、肉類、魚介類、卵、乳製品、豆類などに多く含まれています。バランスの取れた食事で十分な量を摂取することが大切です。 -
鉄(Iron)
鉄は、甲状腺ホルモンの合成に必要な成分であり、不足すると甲状腺機能が低下しやすくなります。特に女性は月経による鉄分の損失が多いため、意識して摂取することが望まれます。レバー、赤身肉、魚、豆類、緑黄色野菜などから、適量の鉄を摂取するよう心がけましょう。
これらの栄養素をバランス良く摂取することが、甲状腺の健康を保つために重要です。サプリメントを使用する場合は、過剰摂取にならないよう、医師の指導のもとで行いましょう。
甲状腺の健康に役立つ食品とレシピ
甲状腺に良い栄養素を効率的に摂取するために、普段の食事に取り入れやすい食品やレシピをいくつか紹介します。これらの食品を積極的に食事に取り入れ、甲状腺の健康をサポートしましょう。
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海藻サラダ(ヨウ素、鉄分豊富)
海藻(わかめ、昆布、ひじき)を使ったサラダは、ヨウ素や鉄分を効率的に摂取できます。海藻を水で戻し、サラダ野菜(レタス、きゅうり、トマトなど)と一緒に和え、お好みのドレッシングで仕上げます。ヨウ素の過剰摂取を避けるため、週に2〜3回程度を目安に食べると良いでしょう。 -
ナッツとフルーツのヨーグルト(セレン、亜鉛、カルシウム)
朝食や間食におすすめの一品です。無糖ヨーグルトに、刻んだナッツ(アーモンド、クルミ、ブラジルナッツなど)と季節のフルーツをトッピングします。ナッツ類にはセレンや亜鉛が含まれており、甲状腺の健康維持に役立ちます。フルーツはビタミンCを含むものを選び、鉄分の吸収を助ける効果も期待できます。 -
焼き魚のホイル包み(セレン、鉄、ビタミンD)
魚(鮭、鯖、サンマなど)に塩と胡椒で下味をつけ、ホイルに包んで野菜(玉ねぎ、パプリカ、にんじんなど)と一緒に蒸し焼きにします。魚にはセレンやビタミンDが豊富に含まれており、甲状腺ホルモンの代謝をサポートします。手軽に作れるレシピで、栄養バランスも良い食事です。 -
スムージー(野菜、フルーツ、プロテイン)
忙しい朝や軽食として、栄養価の高いスムージーを取り入れてみましょう。ほうれん草やケールなどの緑黄色野菜、バナナやベリーなどのフルーツ、豆乳やヨーグルトをミキサーで混ぜ、最後にプロテインパウダーを加えます。これにより、必要なビタミンやミネラル、たんぱく質を手軽に摂取でき、甲状腺の機能をサポートします。
これらの食品を日常的に取り入れることで、甲状腺ホルモンの合成を助け、体調を整えることが期待できます。
甲状腺に負担をかける食品と注意点
甲状腺の健康を維持するためには、避けた方が良い食品や注意が必要な食品もあります。以下に、甲状腺に負担をかける可能性がある食品と、その理由を解説します。
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過剰なヨウ素摂取
ヨウ素は甲状腺ホルモンの合成に欠かせない栄養素ですが、過剰に摂取すると逆効果になることがあります。特に、海藻類(昆布、わかめ、ひじき)を大量に摂取すると、甲状腺機能亢進症や自己免疫性疾患のリスクが高まることがあります。ヨウ素の摂取は、1日あたり130μgを目安にし、バランスの良い食事を心がけましょう。 -
大豆製品の過剰摂取
大豆製品(豆腐、納豆、豆乳など)には、イソフラボンと呼ばれる成分が含まれており、甲状腺ホルモンの合成を妨げることがあります。適量であれば問題ありませんが、過剰に摂取することで甲状腺機能に影響を与えることがあるため、1日1食程度に留めることをおすすめします。 -
グルテンを含む食品
グルテン(小麦などに含まれるたんぱく質)は、自己免疫性甲状腺炎(橋本病など)の患者様において、甲状腺機能に悪影響を及ぼすことがあるとされています。グルテンに対して過敏な反応が出る方は、グルテンフリーの食事を試すことも一つの方法です。 -
過剰な加工食品や糖分の摂取
加工食品や砂糖の過剰摂取は、全身の代謝を乱し、甲状腺機能にも悪影響を与えることがあります。特に、精製された糖分(砂糖やフルクトース)は血糖値を急上昇させ、インスリン抵抗性を引き起こすことで、ホルモンバランスに悪影響を与えます。甘いお菓子やジュースなどの摂取は控えめにしましょう。
これらの食品を控え、甲状腺に良い食品を中心としたバランスの取れた食事を心がけることが、甲状腺の健康を守るための基本です。
甲状腺の健康をサポートする生活習慣
甲状腺の健康を維持するためには、食事だけでなく、日常生活の習慣も重要です。以下に、甲状腺の健康をサポートする生活習慣のポイントを紹介します。
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適度な運動を取り入れる
適度な運動は、全身の代謝を促進し、甲状腺の機能をサポートします。ウォーキングやヨガ、軽い筋力トレーニングなど、無理のない範囲で毎日30分程度の運動を行いましょう。運動は、甲状腺ホルモンの働きを活性化させ、体調を整える効果があります。 -
ストレス管理を意識する
ストレスは、甲状腺機能に大きな影響を与えます。過度のストレスは、甲状腺ホルモンのバランスを崩し、機能低下や亢進のリスクを高めます。趣味やリラクゼーション法(深呼吸、瞑想、ヨガなど)を取り入れ、心身のリフレッシュを図ることが大切です。 -
十分な睡眠を確保する
睡眠は、甲状腺ホルモンの分泌と体の回復に欠かせない要素です。質の良い睡眠を確保するため、寝る前のスマホ使用を控え、リラックスできる環境を整えましょう。毎日同じ時間に寝起きすることで、体内時計が整い、甲状腺の健康がサポートされます。 -
定期的な健康チェックを受ける
甲状腺機能に不調を感じる場合や、家族に甲状腺疾患の既往がある場合は、定期的に専門医の診察を受けることが重要です。早期発見と適切な治療が、甲状腺疾患の進行を防ぎ、健康を維持する鍵となります。
これらの生活習慣を取り入れることで、体調を整えることが期待できます。当院では、甲状腺に関する診察や健康相談を随時受け付けておりますので、気になる症状がある場合は、お気軽にご相談ください。
監修者プロフィール
院長 山田 朋英 (Tomohide Yamada)
医学博士 (東京大学)
山田院長は、糖尿病・甲状腺・内分泌内科の専門医であり、東京大学で医学博士号を取得しています。東大病院での指導医としての経験や、マンチェスター大学、キングスカレッジロンドンでの客員教授としての国際的な研究経験を持ち、生まれ故郷の蒲田でクリニックを開院しました。
資格・専門性
- 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・研修指導医
- 日本内科学会 総合内科専門医
豊富な臨床と研究の経験を活かし、糖尿病や甲状腺疾患の診断と治療を提供しています。