甲状腺機能低下症と心臓病の関係について

甲状腺機能低下症とは?

甲状腺機能低下症は、甲状腺が十分な量の甲状腺ホルモンを生成しない状態を指します。甲状腺ホルモンは、体内の代謝を調節し、エネルギー消費や体温調整、心臓機能に深く関与しています。ホルモンの不足は、さまざまな身体機能に影響を与え、体の代謝が低下することで、疲労感、体重増加、寒がり、うつ状態などの症状が現れることがあります。これらの症状は生活の質を大きく低下させることがあり、放置するとさらに深刻な健康問題を引き起こす可能性があります。

甲状腺機能低下症の主な原因には、橋本病(慢性甲状腺炎)や甲状腺手術後の状態、放射線治療後の影響などがあります。特に女性に多く見られ、加齢に伴って発症リスクが高まるため、定期的な検査が重要です。

甲状腺機能低下症(橋本病)

甲状腺機能低下症と心臓病のリスク

甲状腺機能低下症は、心臓病のリスクを高めることが知られています。甲状腺ホルモンが不足すると、心臓や血管に影響を与え、心血管系疾患の発症リスクが増加します。具体的には、次のような影響があります。

  • 心拍数の低下(徐脈): 甲状腺ホルモンが不足すると、心拍数が減少し、心臓が適切に血液を送り出すことができなくなります。これにより、心臓の負担が増え、心不全を引き起こすことがあります。
  • 高血圧: 甲状腺機能低下症は、血圧の上昇を招くことがあります。特に、収縮期血圧が高くなることが多く、心臓や血管に負担をかけます。
  • コレステロールの増加: 甲状腺ホルモンが不足すると、コレステロールの代謝が低下し、血中のLDL(悪玉コレステロール)やトリグリセリドが増加します。これにより、動脈硬化のリスクが高まり、心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベントのリスクが上昇します。

    厚生労働省 - 甲状腺の病気に関する情報

    日本甲状腺学会 - 甲状腺疾患について

    日本内分泌学会 - 甲状腺疾患について

甲状腺ホルモンと心臓の機能の関係

甲状腺ホルモンは、心臓の収縮力や心拍数、血管の拡張能力に直接的な影響を与えます。これにより、心臓が血液を全身に送り出す能力(心拍出量)が調整されます。甲状腺ホルモンが不足すると、以下のような心臓機能の異常が見られます。

  • 心臓の収縮力の低下: 甲状腺ホルモンは心筋細胞の代謝を促進し、収縮力を高める働きがあります。ホルモンが不足すると、心臓のポンプ機能が低下し、心不全のリスクが増加します。
  • 心筋肥大: 甲状腺ホルモンが慢性的に不足すると、心臓が血液を送り出すために過剰に働く必要があり、心筋が肥厚します。これにより、心臓の柔軟性が失われ、拡張不全や不整脈が発生しやすくなります。
  • 冠動脈疾患のリスク増加: 甲状腺機能低下症は、冠動脈の血流を減少させることで、狭心症や心筋梗塞のリスクを高めます。特に、未治療の甲状腺機能低下症は、重大な心血管イベントを引き起こすことがあります。

甲状腺機能低下症の診断と心臓病の予防

甲状腺機能低下症の診断には、血液検査でのTSH(甲状腺刺激ホルモン)やFT4(遊離型サイロキシン)の測定が必要です。TSHの値が高く、FT4が低い場合は、甲状腺機能低下症と診断されます。診断が確定した場合、甲状腺ホルモンを補充する治療(レボチロキシンの服用)が行われます。

甲状腺機能低下症が心臓病のリスクを高めることを考えると、早期診断と適切な治療が重要です。特に、心血管系の既往歴がある患者や高リスク群(高血圧、高コレステロール血症など)は、定期的な甲状腺機能検査を受けることが推奨されます。

  • 定期的な検査: 心臓病のリスクを軽減するために、甲状腺機能の定期的な検査を行い、ホルモンのバランスを維持することが重要です。
  • 生活習慣の改善: 適切な食事、運動、ストレス管理を行い、血圧やコレステロール値を正常に保つことが、心臓病の予防に役立ちます。
  • 薬物療法の適切な管理: 甲状腺ホルモン補充療法は、医師の指導のもと、適切な量を服用することが重要です。自己判断での薬の増減は避けましょう。

当院での診断と治療のサポート

 

蒲田駅前やまだ内科 糖尿病・甲状腺クリニックでは、甲状腺機能低下症と心臓病に関する包括的な診断と治療を提供しています。患者さん一人ひとりの症状や背景を考慮し、最適な治療プランを作成しています。

  • 詳細な血液検査: 甲状腺ホルモンや心血管リスクの評価のため、TSH、FT4、LDLコレステロールなどの血液検査を行います。
  • エコー検査による評価: 甲状腺の形態や機能を確認するための超音波検査を実施し、正確な診断を行います。
  • 個別に合わせた治療計画: 甲状腺ホルモン補充療法や心血管系の治療、生活習慣改善のアドバイスなど、患者さんの生活スタイルに合わせた治療計画を提案します。

当院では、患者さんが安心して治療を受けられるよう、わかりやすい説明ときめ細やかなフォローアップを心がけています。甲状腺に関する不安や疑問がありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。


監修者プロフィール
院長 山田 朋英 (Tomohide Yamada)
医学博士 (東京大学)

山田院長は、糖尿病・甲状腺・内分泌内科の専門医であり、東京大学で医学博士号を取得しています。東大病院での指導医としての経験や、マンチェスター大学、キングスカレッジロンドンでの客員教授としての国際的な研究経験を持ち、生まれ故郷の蒲田でクリニックを開院しました。

資格・専門性
日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・研修指導医
日本内科学会 総合内科専門医
豊富な臨床と研究の経験を活かし、糖尿病や甲状腺疾患における最新の治療を提供しています。

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