甲状腺疾患とは ─ 見えにくい病気、誤解されやすい病気

甲状腺疾患は、甲状腺ホルモンの分泌異常によって起こる病気で、代表的なものにバセドウ病(甲状腺機能亢進症)や橋本病(甲状腺機能低下症)があります。
症状は多岐にわたり、
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疲労感
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動悸・息切れ
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不眠・抑うつ
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体重の増減
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顔貌や目の変化(特にバセドウ病) などがあり、心療内科や精神科に誤って受診されるケースも多くあります。
このように、外見からわかりづらく、自己申告なしには理解されにくい症状が多いことから、患者はしばしばスティグマ(偏見・社会的不理解)に直面します。
甲状腺疾患に伴うスティグマの現実
甲状腺疾患の患者は以下のようなスティグマを経験することがあります:
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「怠けている」と誤解される(疲労感やうつ症状)
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「性格が変わった」と言われる(情緒不安定)
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見た目の変化(眼球突出、体型変化)による自己否定感
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「女性特有のわがまま」と片付けられる(特に橋本病)
これらの経験は、患者の自己肯定感を損ない、社会生活や仕事、家庭における関係性にも悪影響を及ぼすことがあります。特に女性患者に多く、男女間での理解のギャップも課題です。
ある国内調査では、甲状腺疾患を持つ女性の約60%が「他人から理解されにくい」と回答しています(参考:日本内分泌学会 患者支援部会 2021報告)。
アドボカシー活動の重要性と世界の取り組み
アドボカシーとは、「擁護」「代弁」を意味し、患者の権利や立場を守り、社会的な理解を広げるための活動を指します。
世界の事例:
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アメリカのThyroid Federation International(TFI) 国際的な甲状腺疾患支援団体で、世界中の啓発月間を通じて患者の声を社会に届けています。
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英国のButterfly Thyroid Cancer Trust 患者の心理支援や職場復帰サポート、教育資材の提供に積極的。
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**日本でも、患者会「甲状腺疾患を考える会」**が啓発ポスター制作や講演活動を展開中。
アドボカシー活動を通して、「見えない病気を“見える化”する」ことが、スティグマの解消には不可欠です。
医療現場と社会ができること ─ 新たな視点と共感

医療者の役割
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症状の“見える化”と説明責任を果たす(例:図やモデルを用いた説明)
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診断時に心理的影響や社会的サポートについても説明
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患者の語りを丁寧に聴く「ナラティブ・アプローチ」の実践
社会の理解
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職場や学校における合理的配慮(疲労時の配慮、診療時間の調整など)
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「病気だから○○できない」ではなく、「○○するにはどうすればよいか」の視点への転換
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SNS等での当事者の声の可視化もスティグマの軽減に有効
教育現場
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保健教育やメンタルヘルス教育での甲状腺疾患の理解促進
当院でのサポート

当院では、甲状腺疾患に対する医療のみならず、患者の社会的・心理的サポートも重視しています。
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わかりやすい説明:初診時から「甲状腺とは?」を丁寧に解説。イラストや模型も使用。
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診断書・就労配慮の支援:必要に応じて職場・学校への配慮依頼文書の作成を行います。
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患者向け動画・SNS発信:YouTubeやInstagramにて、甲状腺の病気を“見える化”する情報発信を実施。
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メンタルケアの連携:うつ、不安、不眠などを伴う患者様に対しては、精神科・心療内科と連携し包括的に対応しています。
患者さんが「病気のせいで自分らしさを失う」のではなく、「病気があっても自分らしく生きられる」よう、医療と社会の間の橋渡し役としての役割を果たします。
監修者プロフィール
院長 山田 朋英 (Tomohide Yamada)
医学博士(東京大学)
山田院長は、糖尿病・甲状腺・内分泌内科の専門医であり、東京大学で医学博士号を取得しています。東大病院での指導医としての経験や、マンチェスター大学、キングスカレッジロンドンでの客員教授としての国際的な研究経験を持ち、20年間の専門の経験を活かし生まれ故郷の蒲田でクリニックを開院しました。
資格・専門性
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日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・研修指導医
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日本内科学会 総合内科専門医
豊富な臨床と研究の経験を活かし、糖尿病や甲状腺疾患における最新の治療を提供しています。