BOT(内服薬+1日1回の持効型インスリン治療)とは

BOT(Basal Supported Oral Therapy)は、主に2型糖尿病の治療に用いられる治療法で、内服薬に加えて1日1回の持効型インスリンを併用する方法です。食後の血糖値だけでなく、空腹時の血糖値のコントロールも必要とされる場合に有効です。
基本的な構成:
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内服薬(SU薬、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬など)
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持効型インスリン(グラルギン、デグルデクなど)を1日1回、主に夜間投与
BOTは、生活習慣の変化や加齢、インスリン分泌能の低下により、内服薬だけでは十分な血糖コントロールが困難になった際の移行治療としても選択されます。
最近のガイドラインにおけるBOTの位置づけ
日本糖尿病学会(2023年度改訂)では、BOTを以下のように評価しています:
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インスリン導入の初期段階として、生活の質(QOL)への配慮が重要。
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患者の残存インスリン分泌がある場合にはBOTが有効。
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GLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬と併用することで、低血糖リスクを抑えながら良好なHbA1cコントロールが期待できる。
エビデンス: 2021年のDiabetes Care誌の報告では、BOTを開始した患者群のHbA1cは平均で1.5%低下し、74%の患者が6か月以内に目標値(HbA1c < 7%)を達成したと報告されています(PMID: 33624718)。
BOT治療の新規性・独自性・安全性
新規性
BOTは、従来の強化インスリン療法(複数回インスリン)と比較して、以下の点で優れています:
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1日1回のインスリン注射により、生活負担が軽減
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治療抵抗性のある2型糖尿病患者に新たな選択肢
独自性
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食後高血糖と空腹時高血糖を同時にターゲット
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患者の心理的ハードルを下げる(インスリン導入への抵抗感が少ない)
安全性
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低血糖リスクが比較的低い(特に持効型インスリンの安定した作用プロファイル)
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体重増加のリスクも最小限に抑えられる(SGLT2阻害薬との併用時)
BOT導入のタイミングと早期介入の意義

BOTの導入は以下のような場面で推奨されます:
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HbA1cが8.0%以上で、食事療法+内服薬で改善が見込めない場合
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夜間から早朝にかけての空腹時高血糖が持続する場合
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高齢者や認知機能の問題から、強化インスリン療法が難しい場合
早期導入のメリット:
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β細胞の疲弊を防ぎ、インスリン分泌能の維持につながる
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長期的な合併症(網膜症、腎症、神経障害など)の予防に寄与
数字データ: BOT導入が遅れた群では、3年以内の合併症発症率が27%、導入が早かった群では10%未満というデータも報告されています(日本糖尿病データマネジメント研究 2022)。
当院でのサポート

当院では、BOT療法を希望・検討される方に対して、以下のような万全の体制でサポートしています。
1. 一人ひとりに最適な治療設計
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持効型インスリンの選定(デグルデク vs グラルギンなど)
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既存の内服薬との相性も考慮し、治療プランを立案
2. インスリン導入指導
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看護師と管理栄養士による注射手技・生活指導
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初回は30〜60分のレクチャー+パンフレット配布
3. 患者様との継続的なコミュニケーション
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血糖値の推移や副作用の確認
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必要に応じてオンライン診療やLINE相談対応
4. チーム医療体制
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医師、看護師、臨床検査技師、薬剤師、栄養士が連携
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精神面・身体面の不安を一体的にケア
BOTは、日常生活を大きく変えずに糖尿病のコントロールを改善する優れた治療法です。早めの導入・適切なフォローアップが、合併症予防とQOL向上のカギになります。
監修者プロフィール
院長 山田 朋英 (Tomohide Yamada)
医学博士(東京大学)
山田院長は、糖尿病・甲状腺・内分泌内科の専門医であり、東京大学で医学博士号を取得しています。東大病院での指導医としての経験や、マンチェスター大学、キングスカレッジロンドンでの客員教授としての国際的な研究経験を持ち、20年間の専門の経験を活かし生まれ故郷の蒲田でクリニックを開院しました。
資格・専門性
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日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・研修指導医
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日本内科学会 総合内科専門医
豊富な臨床と研究の経験を活かし、糖尿病や甲状腺疾患における最新の治療を提供しています。