糖尿病治療にインスリンは必要?今は内服治療が主流に

インスリンが不要な場合とは?

糖尿病治療において、必ずしもすべての患者がインスリンを使用しなければならないわけではありません。特に、2型糖尿病の患者の場合、生活習慣の改善や内服薬を適切に使用することで、インスリンを使わずに血糖値をコントロールすることが可能なケースが多く見られます。

インスリン治療が不要なケースは、主に以下の条件を満たす場合に適用されます:

1. 初期の2型糖尿病
 2型糖尿病の初期段階では、体がまだある程度のインスリンを分泌できるため、内服薬や食事療法、運動療法を併用することで血糖値を正常範囲内に保つことが可能です。この段階ではインスリン注射が不要である場合が多いです。

2. 生活習慣改善が効果的な場合
 糖尿病の治療において、食事の見直しや適度な運動の導入が極めて重要です。これらを徹底することで、血糖値を安定させることができれば、インスリンを使わずに治療を進めることができます。糖質制限や適切なカロリー摂取を心がけ、体重管理を行うことがカギとなります。

3. 薬剤の効果が十分な場合
 血糖値を下げるための内服薬(経口血糖降下薬)を適切に使用することで、血糖値が安定している場合、インスリンの必要性はありません。メトホルミンなどの薬剤は、肝臓からの糖の放出を抑制したり、インスリンの効きを良くしたりする働きがあります。これにより、内服薬だけで血糖値を正常に保つことが可能です。

たとえ: 血糖値のコントロールは、体内の「燃料供給」を調整するようなものです。内服薬は、その供給ラインをうまく整えて、インスリンが効きやすくなるのを助けます。

糖尿病とインスリン

内服薬で血糖値をコントロールする方法

糖尿病の内服薬にはさまざまな種類があり、それぞれが異なるメカニズムで血糖値を下げる働きをします。特に近年では、GLP-1受容体作動薬やSGLT-2阻害薬といった新しいタイプの薬が登場し、より効果的に血糖値をコントロールできるようになっています。

GLP-1受容体作動薬(内服薬)
GLP-1受容体作動薬は、インスリン分泌を促進し、血糖値が食後に急上昇するのを抑える効果があります。この薬はもともと注射薬として使用されていましたが、近年では内服薬も登場し、糖尿病患者さんにとってより負担の少ない選択肢となっています。

作用:食後の血糖値の急上昇を抑え、インスリン分泌を助けます。また、食欲を抑える作用もあり、体重管理に役立つことがあります。
メリット:体重減少を促し、血糖値のコントロールだけでなく、肥満の改善にも効果があります。
たとえ: GLP-1受容体作動薬は、食事の際に体の「インスリンエンジン」をスムーズに始動させる「エンジンスターター」のような役割を果たします。

SGLT-2阻害薬
SGLT-2阻害薬は、腎臓での糖の再吸収を抑え、余分な糖を尿として体外に排出することで血糖値を下げる薬です。インスリンとは異なる働きで血糖値をコントロールするため、インスリン分泌が不足している患者さんにも有効です。

作用:腎臓での糖の再吸収を防ぎ、血糖を尿として排出することで血糖値を下げます。
メリット:体重減少や血圧の低下といった、血糖値以外の健康面にも良い影響を与えます。
たとえ: SGLT-2阻害薬は、体に「余分な砂糖を外に出すフィルター」のように働き、血糖値を効率よく管理してくれます。


他にも糖尿病の内服薬にはさまざまな種類があり、それぞれが異なるメカニズムで血糖値を下げる働きをします。

ビグアナイド系薬(メトホルミン):肝臓での糖の産生を抑える働きがあり、インスリンの効き目をよくします。
スルホニル尿素薬(グリベンクラミドなど):膵臓からインスリンの分泌を促します。
DPP-4阻害薬:食事によって上昇した血糖を適切にコントロールし、インスリン分泌を助けます。
これらの薬を適切に使用することで、インスリン注射を避けながらも血糖値を安定させることができます。

インスリンを使わない糖尿病治療のメリット

インスリン注射を使わずに内服薬で血糖値をコントロールできる場合、患者さんにとって以下のようなメリットがあります。

負担が少ない:注射の必要がないため、生活におけるストレスが軽減されます。
血糖値の変動が少ない:インスリンを使わずに内服薬でコントロールすることで、血糖値の大きな変動を防ぐことができます。
たとえ: インスリン注射がハードなトレーニングだとすれば、内服薬は定期的なウォーキングのようなものです。無理せず、体に負担をかけずに効果を発揮します。

内服薬で十分効果がある場合とは?
内服薬だけで血糖値をうまく管理できるかどうかは、糖尿病の進行具合や患者さんのライフスタイルによって異なります。特に、糖尿病の初期段階や、中等度の血糖値上昇が見られる患者さんには、内服薬のみで十分な効果が期待できます。加えて、生活習慣の改善や食事療法、運動療法を組み合わせることで、より安定した血糖コントロールが可能です。

 

当院でのサポート

当院では、インスリンを使わずに内服薬で血糖値をコントロールしたいと考えている方に、最適な治療プランをご提案しています。患者さん一人ひとりの状況に合わせ、内服薬の選択や生活習慣のアドバイスを行い、無理なく糖尿病を管理できるようサポートしています。

糖尿病の治療は、必ずしもインスリンを使わなければならないわけではありません。内服薬を使うことで、血糖値を安定させ、インスリン注射なしで効果的な治療が可能です。当院では、患者さんに合った治療法を提供し、安心して治療を続けられるようサポートしています。糖尿病治療に関してお悩みの方は、ぜひご相談ください。

まとめ

糖尿病治療において、インスリンを使用しない治療法は、多くの患者にとって有効な選択肢となります。内服薬を用いた治療では、患者の負担が軽減され、生活の質が向上する一方で、血糖値を安定させることが可能です。インスリン治療が必要な場合でも、適切なタイミングで治療法を選択することが重要です。

当院では、糖尿病治療において包括的なサポートを提供し、患者様が安心して治療に取り組める環境を整えています。血糖値管理に関して不安がある方や、インスリン治療について詳しく知りたい方は、ぜひ当院にご相談ください。

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監修者プロフィール
**院長 山田 朋英 (Tomohide Yamada)**
**医学博士 (東京大学)**

山田院長は、糖尿病・甲状腺・内分泌内科の専門医であり、東京大学で医学博士号を取得しています。東大病院での指導医としての経験や、マンチェスター大学、キングスカレッジロンドンでの客員教授としての国際的な研究経験を持ち、生まれ故郷の蒲田でクリニックを開院しました。

**資格・専門性**
- 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・研修指導医
- 日本内科学会 総合内科専門医

豊富な臨床と研究の経験を活かし、糖尿病や甲状腺疾患における最新の治療を提供しています。

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