橋本病やバセドウ病が原因で適応障害やうつに?

橋本病とバセドウ病って何?

橋本病バセドウ病は、甲状腺の病気ですが、これらの病気が原因で心の不調が出ることがあります。適応障害やうつ症状が現れ、仕事を続けるのが難しくなってしまうこともあります。このページでは、橋本病やバセドウ病と適応障害・うつの関係について、わかりやすく説明します。

橋本病とバセドウ病って何?

橋本病とバセドウ病は、どちらも甲状腺に関連する自己免疫疾患です。甲状腺は首の前面にある小さな臓器で、体の代謝やエネルギー消費を調整するホルモンを生成しています。このホルモンが正常に働くことで、私たちの体は適切なエネルギーを使い、心身の健康を保つことができます。しかし、橋本病とバセドウ病では、甲状腺の機能が正常に働かなくなり、体全体にさまざまな影響を及ぼします。

橋本病とは?
橋本病は、甲状腺機能低下症の主な原因となる病気で、自己免疫反応が甲状腺を攻撃し、ホルモンの生成が減少する病態です。この結果、代謝が遅くなり、以下のような症状が現れます:
- 慢性的な疲労感
- 体重増加
- 冷え性
- 便秘
- 鬱状態や集中力の低下

橋本病は、特に中年以降の女性に多く見られますが、性別や年齢に関わらず発症する可能性があります。

バセドウ病とは?
一方、バセドウ病は甲状腺機能亢進症の主な原因であり、甲状腺が過剰にホルモンを生成してしまう病気です。これにより、代謝が過剰に活発になり、次のような症状が見られます:
- 動悸や心拍数の増加
- 体重減少
- 震えや手のふるえ
- 発汗過多
- 不安感やイライラ

バセドウ病も橋本病と同様に、自己免疫疾患として知られており、特に20代から40代の女性に多く発症しますが、誰にでも発症する可能性があります。

たとえるなら、橋本病は「エンジンが弱くなっている車」、バセドウ病は「エンジンがオーバーヒートしている車」のようなものです。

甲状腺機能低下症(橋本病)

甲状腺機能亢進症(バセドウ病)

なぜ心の不調が現れるの?

橋本病やバセドウ病によって、甲状腺ホルモンのバランスが崩れると、体だけでなく精神面にも影響を与えることがあります。特にホルモンの乱れは、脳の神経伝達物質にも影響を及ぼし、適応障害やうつ病の症状を引き起こすことが知られています。

橋本病と精神的な不調
橋本病の患者は、甲状腺ホルモンの不足により、精神的なエネルギーや集中力が低下することが多いです。ホルモン不足は、神経伝達物質であるセロトニンやドーパミンの分泌を減少させ、抑うつ感や無気力感を引き起こします。このため、橋本病の患者はしばしば「うつ病」と診断されることがありますが、実際には甲状腺機能の低下が原因であることが多いのです。

橋本病の患者に見られる精神的な症状には以下のものがあります:
- 抑うつ感
- 無気力や意欲の低下
- 集中力の欠如
- 不安感や自己評価の低下

バセドウ病と精神的な不調
一方、バセドウ病では甲状腺ホルモンが過剰に分泌されるため、神経系が過敏になりやすく、不安やイライラ感が強くなります。また、ホルモンの過剰分泌は脳の神経回路にストレスを与え、睡眠障害や情緒不安定を引き起こすことがあります。これにより、適応障害や不安障害のような精神的な症状が現れることがあります。

バセドウ病の精神的な症状には以下のものが含まれます:
- 強い不安感やパニック
- 些細なことに対するイライラ
- 睡眠障害
- 注意散漫や落ち着きのなさ

甲状腺ホルモンの異常が精神状態に影響を与えるのは、脳がホルモンバランスに非常に敏感であるためです。そのため、心の不調が甲状腺の問題によって引き起こされている可能性がある場合は、早期に適切な診断と治療を受けることが重要です。

たとえるなら、エンジンの調子が悪くなると、車全体がうまく動かなくなるように、甲状腺の不調が心にも影響を与えてしまうのです。

仕事が続けられないことも

橋本病やバセドウ病に関連する心身の不調は、日常生活や仕事に大きな影響を及ぼすことがあります。特に、甲状腺ホルモンの異常による疲労感や集中力の低下、精神的な不安感は、職場でのパフォーマンスに悪影響を与えることがあります。

橋本病が引き起こす職場での問題
橋本病の患者は、慢性的な疲労感や体力の低下に悩まされることが多く、集中力を維持するのが難しくなることがあります。特に、デスクワークや長時間の会議など、集中力が要求される仕事では、意欲や生産性が低下し、結果的に仕事を続けられなくなる場合もあります。また、抑うつ感や無気力感が強くなることで、仕事に対するモチベーションも低下し、長期間の休職や退職を余儀なくされることもあります。

バセドウ病による職場での困難
一方、バセドウ病の患者は、神経過敏や不安感によって仕事に集中できないことが多く、周囲とのコミュニケーションに支障をきたすこともあります。また、動悸や体力の低下により、体力的な負荷が大きい仕事やストレスの多い職場環境では、症状が悪化することもあります。特に、イライラや焦燥感が強くなると、同僚や上司との関係が悪化し、職場環境がストレスの原因になることもあります。

適応障害やうつとの関係
橋本病やバセドウ病が原因で発生する精神的な不調は、適応障害やうつ病と診断されることがあります。適応障害は、ストレスに対して過度に反応することで発症し、うつ病と同様に感情のコントロールが難しくなります。仕事が続けられないほどの精神的な不調が見られる場合、甲状腺ホルモンの異常が根本的な原因となっていることを見逃さないことが重要です。

当院でのサポート

当院では、橋本病やバセドウ病に関連する心身の不調に対して、包括的な診療と治療を提供しています。甲状腺疾患によるホルモンバランスの乱れが精神的な不調を引き起こすことは珍しくなく、適切な診断と治療が必要です。当院では、患者様の症状に応じた個別の治療プランを提案し、心と体の両面からサポートします。

1. 専門的な診断
まず、甲状腺機能の状態を確認するために、血液検査を通じて甲状腺ホルモンや甲状腺刺激ホルモン(TSH)のレベルを測定します。これにより、橋本病やバセドウ病の有無を正確に診断します。また、精神的な不調についても問診を行い、心身の状態を総合的に評価します。

2. ホルモン補充療法
橋本病の患者に対しては、甲状腺ホルモン補充療法を提供し、不足しているホルモンを補うことで、体全体の代謝を正常化します。これにより、心の不調も改善することが期待されます。

一方、バセドウ病の患者には、甲状腺ホルモンの過剰分泌を抑える薬物療法やアイソトープ治療が行われ、ホルモンバランスを整えることで、精神的な安定を取り戻します。

3. 精神的なケア
甲状腺疾患に伴う精神的な症状に対しては、専門医とのカウンセリングや精神科医との連携による治療が行われます。適応障害やうつ病が見られる場合には、抗うつ薬や抗不安薬の処方が行われることもありますが、甲状腺ホルモンの治療が根本的な解決策となることが多いため、ホルモンバランスを整えることが最優先です。

まとめ

橋本病やバセドウ病は、甲状腺の異常が原因となり、心身にさまざまな不調を引き起こす病気です。これらの疾患が適応障害やうつ病のような精神的な症状を引き起こすことは珍しくなく、甲状腺ホルモンのバランスが乱れることで、心の健康にも影響が及びます。

日常生活や仕事に支障をきたす場合、甲状腺の問題が原因であることを見逃さず、早期に診断を受けることが大切です。当院では、橋本病やバセドウ病に関連する心身の不調に対して、専門的な診療とサポートを提供しています。甲状腺の問題が疑われる場合は、ぜひ当院にご相談ください。

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監修者プロフィール
院長 山田 朋英 (Tomohide Yamada)
医学博士 (東京大学)

山田院長は、糖尿病・甲状腺・内分泌内科の専門医であり、東京大学で医学博士号を取得しています。東大病院での指導医としての経験や、マンチェスター大学、キングスカレッジロンドンでの客員教授としての国際的な研究経験を持ち、生まれ故郷の蒲田でクリニックを開院しました。

**資格・専門性**
- 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・研修指導医
- 日本内科学会 総合内科専門医

豊富な臨床と研究の経験を活かし、糖尿病や甲状腺疾患における最新の治療を提供しています。

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