甲状腺と眼の痛みの関係とは?

甲状腺って何をしているの?

 

甲状腺の問題が、眼の痛みに関係していることがあるのを知っていますか?甲状腺は首にある小さな臓器ですが、体全体に大きな影響を与えるため、眼に不調が現れることもあります。このページでは、甲状腺と眼の痛みの関係について、わかりやすく説明します。

甲状腺って何をしているの?

甲状腺は、首の前面に位置する小さな臓器で、蝶のような形をしており、体全体の代謝を調整する重要な役割を担っています。具体的には、甲状腺ホルモン(T3およびT4)を分泌し、エネルギー消費、体温調整、心拍数の管理、さらには消化機能や精神的な健康まで、多くの体の機能に関わっています。甲状腺ホルモンが適切な量で分泌されていると、体内のエネルギーがスムーズに使われ、日常生活を快適に送ることができます。
 
しかし、甲状腺が正常に働かなくなると、ホルモンの過剰分泌や不足が発生し、体にさまざまな不調を引き起こします。ホルモンが過剰に分泌される状態を「甲状腺機能亢進症」といい、逆に不足する状態を「甲状腺機能低下症」と呼びます。これらの状態が、代謝の異常や体のさまざまな症状を引き起こし、時には眼にも影響を与えることがあります。特に「甲状腺眼症」と呼ばれる病気は、眼の痛みや違和感を伴うことがあり、甲状腺の問題と眼の健康は密接に関係していることがわかっています。

たとえるなら、甲状腺は「体のエンジンオイル」のようなもので、これが不足したり、逆に多すぎたりすると、エンジン(体)がうまく動かなくなり、眼にも不調が現れることがあるのです。

甲状腺機能亢進症(バセドウ病)

どうして甲状腺の問題で眼が痛くなるの?

甲状腺と眼の痛みの関連性は、主に「甲状腺眼症」と呼ばれる病気が原因です。甲状腺眼症は、甲状腺の異常、特にバセドウ病(甲状腺機能亢進症)の患者に見られることが多い自己免疫疾患です。この病気では、免疫システムが誤って眼の周囲の組織や筋肉を攻撃することで炎症が起こり、眼に痛みや不快感を引き起こします。
 
甲状腺眼症では、次のような症状が見られます。
- 眼の周りの腫れや炎症
- 眼が乾燥している感じ
- 眼の奥に圧迫感や痛み
- まぶたが腫れて開きにくくなる
- 光に対する過敏さ
- 眼が前に飛び出すように見える「眼球突出」
 
これらの症状が現れる理由は、甲状腺ホルモンの異常に伴う免疫システムの過剰な反応によって、眼の筋肉や組織に炎症が起こり、腫れが生じるためです。この腫れが眼球を圧迫し、痛みや違和感を引き起こします。また、眼球の奥にある組織が肥大化することで、眼球を前に押し出すような圧力がかかり、眼が飛び出して見えることがあります。これが進行すると、視力低下や二重視(複視)を引き起こすこともあります。

たとえるなら、エンジンが過熱してしまい、その熱が別の部品(眼)にも伝わって不具合が起きるような感じです。

眼の痛みを感じたらどうしたらいいの?

眼の痛みや違和感を感じた場合、まずは放置せずに専門医の診察を受けることが重要です。特に甲状腺の問題を抱えている場合、甲状腺眼症の兆候である可能性が高いため、早めの診断と治療が必要です。眼の痛みや腫れ、圧迫感が長引くと、視力にも影響が出ることがあり、進行した場合には治療が難しくなることもあります。
 
甲状腺眼症の診断は、眼科と内分泌内科の連携が重要です。甲状腺ホルモンのバランスを確認するための血液検査や、眼球の状態を詳しく調べるためのCTやMRIなどの画像検査が行われます。これにより、甲状腺の異常が眼の症状と関連しているかどうかを判断します。
 
また、眼の痛みや不快感を軽減するためのセルフケアも有効です。以下のような方法を試してみると、症状が軽減することがあります。
- 人工涙液を使用して、眼の乾燥を防ぐ
- 眼をこすらないように注意する
- 目の周りを冷やして腫れを軽減する
- 光に対する過敏がある場合は、サングラスをかける
 
ただし、セルフケアだけでは根本的な改善は難しいため、眼の痛みを感じたら、できるだけ早く専門の医療機関を受診することが重要です。特に甲状腺の治療が進行中の患者は、眼の症状にも気を配りましょう。

たとえるなら、エンジンの異常を感じたら、すぐに整備士に見てもらうのと同じように、体や眼の不調も早めに医師に相談することが大切です。

甲状腺眼症の治療方法

甲状腺眼症の治療は、患者の症状や病気の進行度に応じて異なります。治療の目標は、甲状腺ホルモンのバランスを正常に保ちつつ、眼の炎症や腫れを抑え、視力の維持を図ることです。
 
1. 甲状腺の治療
甲状腺ホルモンの異常が原因で眼の症状が現れるため、まずは甲状腺の機能を正常化する治療が行われます。甲状腺機能亢進症の場合、薬物療法、アイソトープ治療(放射性ヨウ素治療)、または手術が選択されることがあります。これによって、甲状腺ホルモンのバランスが安定すれば、眼の症状も軽減されることが期待されます。
 
2. 眼の炎症を抑える治療
眼の炎症が重度の場合、ステロイド薬の投与が行われることがあります。ステロイドは強力な抗炎症作用があり、眼の周りの組織や筋肉の腫れを抑える効果があります。ステロイド薬は内服薬として処方されることが多いですが、場合によっては注射で直接眼の周囲に投与されることもあります。
 
3. 放射線療法
眼球の周囲の炎症や腫れが強く、ステロイド治療だけでは効果が見られない場合、放射線療法が選択されることもあります。放射線療法は、眼の周りの炎症を抑えるために放射線を照射する治療法で、特に進行した甲状腺眼症に有効とされています。
 
4. 手術療法
重度の甲状腺眼症では、眼球突出や視力低下を改善するために手術が行われることもあります。眼球を押し出している肥大した組織を除去する「眼窩減圧術」や、まぶたの位置を修正する手術が選択されます。手術によって、見た目の改善だけでなく、視力の回復が期待できます。
 
治療は症状の進行具合や個々の患者の状況に応じて決定され、早期の介入が重要です。適切な治療を受けることで、甲状腺眼症の進行を食い止め、視力を保つことができます。

当院でのサポート

 

当院では、甲状腺眼症を含む甲状腺疾患に対して、専門的な診断と治療を提供しています。甲状腺の異常は全身に影響を与えることがあり、眼の痛みや違和感が甲状腺の異常を示すサインであることも少なくありません。当院では、甲状腺と眼の関係性を理解した専門医が、患者様一人ひとりに適した治療を行っています。


専門的な診断
甲状腺眼症の診断には、内分泌内科と眼科の両方の視点が重要です。当院では、甲状腺ホルモンの状態を確認するための血液検査や、眼の異常を詳しく調べるためのCTやMRIなどの画像検査を行い、総合的な診断を行うため、専門機関をご紹介します。

フォローアップと長期的なサポート
甲状腺眼症は慢性的な疾患であり、治療後も定期的なフォローアップが必要です。当院では、患者様の状態を継続的にモニタリングし、甲状腺ホルモンのバランスや眼の症状が安定しているかを眼科の先生方と協力して確認します。治療後も安心して生活を送れるよう、全力でサポートいたします。

眼の痛みや違和感を感じた場合、甲状腺の問題が関係しているかもしれません。お悩みの方は、ぜひ当院にご相談ください。経験豊富な医師が、適切な診断と治療を提供いたします。

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監修者プロフィール
院長 山田 朋英 (Tomohide Yamada)
医学博士 (東京大学)

山田院長は、糖尿病・甲状腺・内分泌内科の専門医であり、東京大学で医学博士号を取得しています。東大病院での指導医としての経験や、マンチェスター大学、キングスカレッジロンドンでの客員教授としての国際的な研究経験を持ち、生まれ故郷の蒲田でクリニックを開院しました。

**資格・専門性**
- 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・研修指導医
- 日本内科学会 総合内科専門医

豊富な臨床と研究の経験を活かし、糖尿病や甲状腺疾患における最新の治療を提供しています。

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