甲状腺ホルモンと生理不順の関係とは?

甲状腺ホルモンと生理不順の関係とは?

甲状腺ホルモンは、体内のさまざまな代謝活動を調整する重要なホルモンであり、生理周期にも大きな影響を及ぼします。甲状腺ホルモンの分泌異常があると、月経不順や無月経、過多月経などの生理に関する問題が発生することがあります。甲状腺機能の異常が女性のホルモンバランスにどのような影響を与えるのか、詳しく見ていきましょう。

甲状腺ホルモンの役割

甲状腺ホルモンは、基礎代謝を調整するだけでなく、女性の生殖機能にも深く関与しています。甲状腺ホルモンのバランスが乱れると、脳の下垂体から分泌される性腺刺激ホルモン(FSHやLH)の分泌が影響を受け、卵巣機能が低下することがあります。このため、月経周期の乱れや排卵の異常が起こりやすくなります。

甲状腺ホルモンの分泌異常は、甲状腺機能低下症と甲状腺機能亢進症の2つに大別されます。これらの疾患がどのように生理不順を引き起こすのか、次のセクションで詳しく解説します。

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甲状腺機能低下症と生理不順

甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの分泌が不足する状態を指し、女性の生理周期に多大な影響を与えます。特に、次のような症状が見られることがあります。

月経過多と無月経

甲状腺ホルモンが不足すると、月経過多(過剰な経血量)や無月経(生理が止まる)の原因となることがあります。ホルモンバランスの乱れが、子宮内膜の正常な発育を妨げ、月経周期が不規則になるのです。また、甲状腺機能低下症は、血液凝固異常を引き起こすこともあり、これが月経過多を悪化させることがあります。

月経周期の長期化

甲状腺機能低下症の女性では、月経周期が35日以上になる「稀発月経」と呼ばれる状態がよく見られます。これは、甲状腺ホルモンの不足が脳の下垂体に影響を与え、性腺刺激ホルモンの分泌が抑制されるためです。その結果、卵巣の働きが低下し、排卵が正常に行われなくなります。

妊娠しにくくなる

甲状腺機能低下症は、妊娠に必要なホルモンのバランスを崩し、不妊症の原因となることがあります。月経不順が続く場合は、甲状腺機能を調べることが推奨されます。当院では、血液検査により甲状腺ホルモンの状態を詳しく評価し、適切な治療を行います。

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甲状腺機能亢進症と生理不順

甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される状態を指し、これもまた生理不順を引き起こす原因となります。甲状腺機能亢進症の代表的な疾患であるバセドウ病は、以下のような生理不順を引き起こします。

月経不順と無月経

甲状腺ホルモンの過剰分泌は、基礎代謝の亢進を引き起こし、体内のエネルギー消費が急激に増加します。この状態が続くと、体がエネルギー不足を補うために生殖機能を抑制し、月経不順や無月経が生じることがあります。これは、特に体重が急激に減少する場合に起こりやすくなります。

月経の遅れ

甲状腺機能亢進症に伴うホルモンバランスの乱れにより、排卵のタイミングが狂い、月経が遅れることがあります。これにより、月経周期が不規則になり、女性の健康に悪影響を与えることがあります。

その他の症状

甲状腺機能亢進症の女性では、月経不順だけでなく、手足の震え、動悸、発汗過多などの症状も現れることが多いです。これらの症状が見られた場合は、早めに専門医を受診することが重要です。

当院では、甲状腺機能亢進症の診断と治療を行っており、患者様の症状に合わせた最適な治療法を提供しています。

甲状腺ホルモン異常による生理不順の診断と治療

甲状腺ホルモン異常が疑われる生理不順の診断には、まず詳細な問診と身体診察が行われます。その後、血液検査で甲状腺ホルモン(TSH、FT4、FT3)を測定し、甲状腺機能が正常かどうかを確認します。必要に応じて、甲状腺自己抗体の検査やエコー検査も行い、甲状腺の状態をより詳しく評価します。

治療の流れ

治療は、甲状腺ホルモンの異常を正すことが基本です。甲状腺機能低下症の場合は、レボチロキシン(合成甲状腺ホルモン)の服用により、ホルモンバランスを整えます。一方、甲状腺機能亢進症の場合は、抗甲状腺薬の服用や放射性ヨウ素治療、手術など、患者様の状態に合わせた治療が行われます。

生理不順の改善

甲状腺ホルモン異常が正常化すると、ほとんどのケースで生理不順は改善されます。しかし、長期間のホルモンバランスの乱れが続いた場合には、元の状態に戻るまでに時間がかかることもあります。そのため、甲状腺ホルモン異常が疑われる場合は、できるだけ早く治療を開始することが重要です。

当院では、甲状腺疾患による生理不順の治療においても、専門的な診断と治療を提供し、患者様の症状改善をサポートしています。

厚生労働省 - 甲状腺の病気に関する情報

日本甲状腺学会 - 甲状腺疾患について

日本内分泌学会 - 甲状腺疾患について

当院でのサポート

 

当クリニックでは、甲状腺ホルモン異常による生理不順に対して、以下の流れで診療を行っています。

  1. 初診予約と来院
    ご予約はウェブサイトまたはお電話で承っております。ご来院いただいた際には、現在の症状やこれまでの病歴を詳しくお伺いし、診察を行います。

  2. 問診と検査
    詳細な問診と身体診察の後、血液検査や超音波検査を行い、甲状腺ホルモンの状態を評価します。生理不順の原因が甲状腺ホルモンにあるかどうかを確認するために、TSH、FT4、FT3の測定を行います。

  3. 診断と治療計画の立案
    診断結果に基づき、患者様に最適な治療計画を立てます。甲状腺機能異常が原因であれば、ホルモン補充療法や抗甲状腺薬の投与を開始します。また、症状の改善に向けて、生活習慣やストレス管理のアドバイスも行います。

  4. 定期的なフォローアップ
    治療開始後は、定期的に来院していただき、血液検査で甲状腺ホルモンの状態を確認します。治療効果や副作用の有無を評価し、必要に応じて治療内容を調整します。

  5. 長期的なサポート
    患者様が健康な生活を送れるよう、長期的なフォローアップを行い、再発予防に努めます。特に、妊娠を希望する患者様には、適切な甲状腺機能の管理を行い、健康な妊娠と出産をサポートします。

当院では、患者様一人ひとりに寄り添った丁寧な診療を心がけ、最適な治療を提供しています。生理不順でお悩みの方は、ぜひご相談ください。


監修者プロフィール

院長 山田 朋英 (Tomohide Yamada)
医学博士 (東京大学)

山田院長は、糖尿病・甲状腺・内分泌内科の専門医であり、東京大学で医学博士号を取得しています。東大病院での指導医としての経験や、マンチェスター大学、キングスカレッジロンドンでの客員教授としての国際的な研究経験を持ち、生まれ故郷の蒲田でクリニックを開院しました。

資格・専門性

  • 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・研修指導医
  • 日本内科学会 総合内科専門医

豊富な臨床と研究の経験を活かし、糖尿病や甲状腺疾患における最新の治療を提供しています。

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