甲状腺機能低下症と骨粗鬆症の関係について

甲状腺機能低下症とは?

甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの分泌が不足し、体の代謝活動が低下する病気です。甲状腺ホルモンは、体のエネルギー代謝、体温調節、心拍数、消化機能など多岐にわたる機能を調整しており、その不足は全身にさまざまな影響を与えます。代表的な症状としては、疲労感、体重増加、寒さへの感受性の増加、皮膚の乾燥、抑うつ、便秘、月経不順などがあります。

甲状腺機能低下症の原因は、慢性甲状腺炎(橋本病)や甲状腺手術後、放射性ヨウ素治療後などによるものが多く、また、ヨウ素不足や特定の薬物使用も原因となることがあります。甲状腺機能低下症は適切な治療を受けなければ、生活の質が著しく低下するだけでなく、さまざまな合併症を引き起こすこともあります。

甲状腺機能低下症(橋本病)

骨粗鬆症とは?

骨粗鬆症は、骨密度が低下し、骨がもろくなり骨折しやすくなる疾患です。主に閉経後の女性や高齢者に多く見られますが、若年者でも特定の病気や生活習慣が原因で発症することがあります。骨粗鬆症は、骨折のリスクを高め、特に大腿骨や脊椎、手首などの骨折が日常生活に大きな影響を与える可能性があります。

骨粗鬆症の原因としては、カルシウムやビタミンDの不足、運動不足、喫煙、アルコールの過剰摂取、遺伝的要因、そしてホルモンバランスの異常などが挙げられます。特にエストロゲンの減少は、骨密度の減少を引き起こす主な要因の一つであり、閉経後の女性に骨粗鬆症が多い理由の一つです。

厚生労働省 - 甲状腺の病気に関する情報
日本甲状腺学会 - 甲状腺疾患について
日本内分泌学会 - 甲状腺疾患について

甲状腺機能低下症と骨粗鬆症の関連性

甲状腺機能低下症と骨粗鬆症には、以下のような関連性があります。

  • 骨代謝への影響
    甲状腺ホルモンは、骨の新陳代謝において重要な役割を果たします。骨は常に「骨吸収」と「骨形成」という過程を繰り返していますが、甲状腺ホルモンが不足すると、これらのバランスが崩れ、骨代謝が低下することがあります。その結果、骨密度の減少を引き起こし、骨粗鬆症のリスクが高まります。

  • カルシウムとビタミンDの吸収低下
    甲状腺機能低下症では、カルシウムやビタミンDの腸からの吸収が低下することがあります。これにより、体内のカルシウム濃度が低下し、骨の健康に悪影響を及ぼします。また、甲状腺機能低下症により副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌が変化し、骨のカルシウムの放出が増加することも骨密度の低下に繋がる要因となります。

  • エストロゲンとの関連性
    甲状腺機能低下症は、特に女性に多く見られ、エストロゲンの減少と密接に関連しています。エストロゲンは骨密度を維持する役割を持ち、閉経後の女性ではその減少により骨粗鬆症のリスクが増加します。さらに、甲状腺機能低下症によりエストロゲンの代謝が乱れることで、骨粗鬆症の発症リスクがさらに高まる可能性があります。

骨粗鬆症の予防と管理

甲状腺機能低下症を持つ患者が骨粗鬆症を予防・管理するためには、以下の対策が有効です。

  • 適切な薬物療法
    甲状腺機能低下症の治療には、甲状腺ホルモン補充療法が用いられます。レボチロキシンなどのホルモン補充薬を正しく服用することで、ホルモンバランスを正常に保ち、骨代謝の異常を防ぐことができます。

  • カルシウムとビタミンDの摂取
    骨の健康を維持するためには、カルシウムとビタミンDの十分な摂取が不可欠です。これらの栄養素は、乳製品や緑黄色野菜、魚などの食品から摂取でき、また、必要に応じてサプリメントの使用も検討します。

  • 運動習慣の確立
    骨密度を維持するためには、適度な運動が重要です。特に、負荷のかかる運動(ウォーキングや筋力トレーニング)は、骨の強度を高める効果があります。無理のない範囲で、継続的に行うことが大切です。

  • 禁煙と節酒
    喫煙は骨密度を低下させるリスク因子の一つです。また、過度の飲酒も骨代謝に悪影響を与えるため、禁煙や節酒を心がけることが骨粗鬆症の予防に役立ちます。

当院での診療とサポート

 

5. 当院での診療とサポート

蒲田駅前やまだ内科 糖尿病・甲状腺クリニックでは、甲状腺機能低下症と骨粗鬆症の関係について包括的な診療を行っています。患者様一人ひとりの症状や生活スタイルを考慮し、最適な治療計画を提供します。

  1. 初診時の問診と診察
    患者様の既往歴や症状を丁寧にお聞きし、甲状腺機能と骨密度に関するリスク評価を行います。

  2. 詳細な検査と診断
    甲状腺ホルモン(TSH、FT4、FT3)や副甲状腺ホルモン、ビタミンDなどの血液検査を行い、ホルモンバランスを評価します。必要に応じて、骨密度測定(DXA)も実施し、骨粗鬆症のリスクを正確に診断します。

  3. 治療計画の提案と実施
    検査結果に基づき、甲状腺ホルモン補充療法やカルシウム、ビタミンDの補充、運動指導など、包括的な治療計画を提案します。患者様の生活スタイルや希望に応じて、最適な治療を行います。

  4. フォローアップと継続的なケア
    治療効果を確認しながら、定期的なフォローアップを行います。治療中の不安や疑問についても、丁寧にサポートいたします。

当院では、患者様が安心して治療を受けられるよう、わかりやすい説明ときめ細やかなサポートを心がけています。甲状腺機能低下症や骨粗鬆症に関するご相談がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。


監修者プロフィール
院長 山田 朋英 (Tomohide Yamada)
医学博士 (東京大学)

山田院長は、糖尿病・甲状腺・内分泌内科の専門医であり、東京大学で医学博士号を取得しています。東大病院での指導医としての経験や、マンチェスター大学、キングスカレッジロンドンでの客員教授としての国際的な研究経験を持ち、生まれ故郷の蒲田でクリニックを開院しました。

 

資格・専門性
日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・研修指導医
日本内科学会 総合内科専門医
豊富な臨床と研究の経験を活かし、糖尿病や甲状腺疾患における最新の治療を提供しています。

TOPへ