甲状腺の血液検査が必要な症状
甲状腺と呼ばれる臓器を聞いたことはあるでしょうか? 甲状腺は、首の前側、のど仏のやや下に位置し、全身の代謝をコントロールする甲状腺ホルモンを分泌しています。
以下のような症状を自覚する場合、甲状腺疾患が疑われます。
- 急激に体重が増減する
- 疲れやすくなった
- 脈が速い
- 冷える
- 首が腫れる
- 時期にかかわらず汗が出る
当院では、甲状腺ホルモンを測定する血液検査を行っています。また、超音波検査により、甲状腺の位置、大きさ、性状などを観察できます。
甲状腺・副甲状腺の検査項目について
検査項目名 | 検査名詳細 | 検査目的 |
---|---|---|
FT4 | 遊離サイロキシン | 甲状腺ホルモンの一種です。 通常、この値が高い場合は甲状腺機能亢進症、 反対に低い場合は甲状腺機能低下症が疑われます。 |
FT3 | 遊離トリヨードサイロニン | 甲状腺ホルモンの一種です。 通常、この値が高い場合は甲状腺機能亢進症、 反対に低い場合は甲状腺機能低下症が疑われます。 |
TSH | 甲状腺刺激ホルモン | 甲状腺を刺激するホルモンで、脳下垂体から分泌されます。 体調などで多少変動することもありますが、 基本的に、血中の甲状腺ホルモンの値が高い場合は分泌が減少し、 反対に血中の甲状腺ホルモンの値が低い場合は分泌が多くなります。 |
TRAb | TSHレセプター抗体 | 甲状腺細胞膜にあるTSHレセプター(受容体)に対する自己抗体です。 バセドウ病の疾患マーカーとして活用されます。 高値を示していても、甲状腺機能が正常であれば問題ありません。 |
TRAb | TSHレセプター抗体 | 良性・悪性にかぎらず、甲状腺に腫瘍ができていれば高値を示します。 過去に甲状腺を全摘出している方で、高値を示す場合は再発が疑われます。 TSHの値に依存して変動するため、少し変動する程度であれば心配いりません。 |
(抗サイログプリン抗体が高値の場合、見かけ上低値を示すことがあります。) | ||
抗TPO抗体 | - | 甲状腺ペルオキシダーゼに対する自己抗体です。 慢性甲状腺炎(橋本病)やバセドウ病を患っている場合、 高値を示すことがあります。 |
抗Tg抗体 | 抗サイログプリン抗体 | サイログプリン(甲状腺ホルモンを作るもとになるタンパク質)に対する自己抗体です。 |
慢性甲状腺炎(橋本病)やバセドウ病を患っている場合、高値を示すことがあります。 | ||
カルシトニン | - | 甲状腺で分泌されるホルモンの一種です。 甲状腺髄様がんの腫瘍マーカーとして利用されます。 |
I-PTH | 副甲状腺ホルモン | 血中のカルシウム濃度を一定に保つ働きをするホルモンです。 |
基準値
基準値 | FT3:1.68~3.67pg/mL |
---|---|
FT4:0.7~1.48 ng/dL | |
TSH:0.35~4.94 μIU/mL |
甲状腺で分泌される甲状腺ホルモン量を測定する検査です。甲状腺ホルモンは、全身の新陳代謝をコントロールする働きを担っています。そのため、分泌が過剰または不足すると、全身に様々な影響を及ぼします。
検査で分かる病気
- FT3・FT4が基準値以上となっており、かつTSHが基準値以下の状態:
→ 甲状腺炎や甲状腺機能亢進症(バセドウ病)など - FT3・FT4が基準値以下で、かつTSHが基準値以上の状態、もしくはTSHが基準値以上のみ:
→ 甲状腺炎や甲状腺機能低下症(粘液水腫や橋本病など)など
甲状腺で分泌される甲状腺ホルモン量を測定する検査です。甲状腺ホルモンは、全身の新陳代謝をコントロールする働きを担っています。そのため、分泌が過剰または不足すると、全身に様々な影響を及ぼします。
甲状腺ホルモンはT3・T4の2種類に分けられ、そのほとんどをT4が占めます。T3も一部は甲状腺より分泌されていますが、大半は肝臓などの別の臓器からT4をもとにして生成されます。なお、最終的にホルモンとして機能するのはT3です。つまり、T4は甲状腺ホルモンを作る力を調べる目的で測定され、T3は甲状腺ホルモンが全身にどの程度働きかけているか調べる目的で測定されます。
TSHは甲状腺を刺激して甲状腺ホルモンの分泌を促す働きがあるホルモンで、脳下垂体から分泌されます。脳下垂体は血中の甲状腺ホルモン量を一定に保つ役目を担っており、不足している場合はTSHの分泌量が多くなります。一方、血中の甲状腺ホルモンが過多になるとTSHの分泌量を減少させ、甲状腺への刺激は止まります。つまり、甲状腺ホルモンの過不足を調べる目的で、TSHが測定されます。
甲状腺機能の異常が顕著な場合、FT3・FT4を測定することで、甲状腺ホルモンの過不足を把握できますが、非常に軽い甲状腺機能異常症の場合、FT3・FT4が異常値を示す前にTSHが異常値を示します。そのため、軽度の甲状腺機能異常を発見するには、TSHの測定が不可欠です。 FT3・FT4が基準値以上となっており、かつTSHが基準値以下の状態は甲状腺機能亢進症(バセドウ病)などが疑われます。反対に、FT3・FT4が基準値以下で、かつTSHが基準値以上の状態、もしくはTSHが基準値以上のみの場合、甲状腺機能低下症(粘液水腫や橋本病など)が疑われます。 なお、本検査では甲状腺に腫瘍が発生したかどうかまでは判断できません。
甲状腺ホルモンの検査が異常値だった場合
検査の結果より、甲状腺機能亢進症または甲状腺機能低下症の可能性があると考えられる場合、原因を突き止めて治療の可否を検討します。必要に応じて、血液検査以外にも画像診断(超音波検査など)を行うこともあります。
甲状腺炎は複数の種類がありますが、無痛性甲状腺炎や亜急性甲状腺炎は一過性の炎症ですが、その他の大半の甲状腺炎は慢性化し、治療の実施が求められます。甲状腺ホルモンの分泌は疾患によって変動するだけでなく、精神的なストレスが加わりTSHの分泌に支障が生じて、結果、甲状腺ホルモンの分泌が低下することがあります。例を挙げると、うつ状態になると、TSHが低値を示し、FT3が低値~基準値内になることがあります。
甲状腺機能異常は、内分泌疾患において一番よく認められる病状です。検査により異常があると指摘された場合、当院までご相談ください。