先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)とは?
先天性甲状腺機能低下症とはクレチン症とも呼ばれ、先天的に甲状腺の機能が低下している疾患です。場合によっては重症化することもあります。
出生時の5,000~6,000人に1人が発症すると言われていましたが、新生児マススクリーニング検査が開始されたことで、軽度の甲状腺機能低下症の新生児も確認されるようになり、現在は世界においては3,000~4,000人に1人が発症していると考えられています。日本では、さらに軽い甲状腺機能低下症も発見できるシステムが整っており、現在では2,000人に1人が発症していると言われています。
クレチン症の原因
クレチン症の原因は、甲状腺が生まれつきない、もしくは小さい、本来の位置にないことなどにより、甲状腺ホルモンをうまく合成できないことが考えられます。
日本では、2,000人に1人で発症していると言われており、男女比は1:2となり比較的女児によく見られます。新生児のマススクリーニング検査が実施されるようになり、従来推測されていた数字よりも多いことが判明してきました。
クレチン症は顔つきに症状が現れます
クレチン症のお客様は顔つきに症状が現れ、鼻が低く、眼瞼は腫れぼったくなり、口は常に開いており、舌が肥大化して口から出ているなどの特徴があります。この特徴的な顔つきを「クレチン顔貌」と呼びます。早期には便秘、かすれた泣き声、臍ヘルニア、手足の冷え、黄疸が長引くなどの症状が見られます。また、皮膚が乾燥して汗をあまりかかず、腹部は大きく張っています。
その他、四肢が短い(特に手足の指)などの特徴もあります。生まれてすぐの頃に甲状腺ホルモンが分泌されていないと、中枢神経の発達に悪影響を及ぼすので、知能障害・発達障害に繋がる恐れがあります。そのため、早い段階で検査を受けることが重要です。
クレチン症の診断方法
生まれてから5~7日以内に、血中の甲状腺刺激ホルモン(TSH)を測るためにマススクリーニング検査を実施します。地域によっては、遊離サイロキシン(FT4)の測定も一緒に実施することもあります。TSHが高値を示した場合、再検査もしくは精密検査が必要です。医療機関の方針次第では、TSH、FT4の再検査のほか、甲状腺超音波検査、大腿骨遠位端(えんいたん)骨格のレントゲン検査を行うこともあります。
また、甲状腺機能低下症が一過性の場合もあるため、一過性甲状腺機能低下症の原因となる母親の甲状腺疾患(バセドウ病の場合は抗甲状腺薬内服の有無)、胎児造影、イソジン消毒などによるヨード大量曝露(ばくろ)の有無などのチェックも必要です。
クレチン症の治療
クレチン症の症状が認められ、マススクリーニング検査にてTSHが高値を示した場合、甲状腺ホルモン製剤を用いた薬物療法を実施します。
生後3ヶ月以内に治療をスタートできれば正常な発達が見込まれますが、生後から1年以上経過した場合は知的障害が残る可能性があります。そのため、早期診断・早期治療が大切です。
クレチン症と鑑別すべき疾患
過性甲状腺機能低下症
原因の多くは胎児造影ですが、他にもTSH結合阻害免疫グロブリン、妊婦への抗甲状腺薬の投与、患児の未熟性などが挙げられます。
男女比は1:1となります。甲状腺薬を用いた治療が必要ですが、一時的なものです。
過性高TSH血症
TSHが軽度上昇している状態ですが、それ以外の甲状腺ホルモン値などの検査結果、臨床所見は異常がありません。
また、TSHも生後数ヶ月経過すると通常状態となるため、治療は行われません。非常に軽度なクレチン症と一過性甲状腺機能低下症との判別が求められます。