75gOGTT(ブドウ糖負荷試験)とは
75gOGTT(75g Oral Glucose Tolerance Test、ブドウ糖負荷試験)は、糖尿病や耐糖能異常(糖尿病予備軍)の診断に用いられる重要な検査です。この検査は、体がどのようにブドウ糖を処理するかを評価するために行われます。具体的には、一定量のブドウ糖を摂取した後に、血糖値の変動を時間を追って測定することで、体がインスリンを適切に分泌し、血糖を処理しているかを確認します。
検査の流れ
1. 空腹時の血糖測定:検査前に最低8時間の絶食を行い、まず空腹時の血糖値を測定します。
2. ブドウ糖の摂取:75gのブドウ糖を含んだ液体を摂取します。
3. 摂取後の血糖測定:ブドウ糖を摂取後、30分、1時間、2時間の間隔で血糖値を測定します。
この検査によって、血糖値が時間の経過とともにどのように変化するかを確認し、糖尿病や耐糖能異常の有無を判断します。特に、空腹時血糖が正常範囲内であっても、食後の血糖値が急激に上昇することで、糖尿病予備軍や耐糖能異常が発見されることがあります。
通常、ブドウ糖負荷試験(OGTT)は糖尿病の診断に用いられることが多いですが、私の経験では、食後の血糖スパイクやその後に生じる反応性低血糖の評価にも非常に有用であることがわかっています。この試験を通じて、食事の影響を受けた血糖の変動やインスリン分泌のバランスを詳細に把握し、患者の状態に応じた個別化治療を行うことが可能です。特に、食後高血糖や低血糖症状が日常生活に支障をきたしている場合、OGTTを活用することで、より精度の高い診断と治療計画の立案ができます。
75gOGTT(ブドウ糖負荷試験)の具体的な基準値
75gOGTTでは、検査結果に基づいて糖尿病や耐糖能異常の診断が行われます。ここでは、診断基準となる血糖値について詳しく見ていきます。
診断基準
- 正常:
空腹時血糖値が110mg/dL未満で、2時間後の血糖値が140mg/dL未満。
- 耐糖能異常(糖尿病予備軍):
空腹時血糖値が110~125mg/dL、または2時間後の血糖値が140~199mg/dL。
- 糖尿病:
空腹時血糖値が126mg/dL以上、または2時間後の血糖値が200mg/dL以上。
この基準値に基づき、糖尿病かどうか、あるいは糖尿病予備軍かどうかを判断します。また、耐糖能異常は、糖尿病発症のリスクが高いため、早期の生活習慣改善や治療が必要です。
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その他の重要なポイント
75gOGTTは、糖尿病の診断だけでなく、妊娠中の妊娠糖尿病の診断にも使用されます。特に妊婦においては、妊娠糖尿病が胎児や母体に重大な影響を与えることがあるため、早期発見と適切な管理が重要です。
厚生労働省 - 糖尿病に関する情報
日本糖尿病学会 -糖尿病について
国立国際医療研究センター - 糖尿病について
HOMA-IRとHOMA-βの基準値
糖尿病や耐糖能異常の評価においては、インスリン抵抗性やインスリン分泌能力も重要な指標となります。HOMA(Homeostasis Model Assessment)という計算式を用いて、インスリン抵抗性(HOMA-IR)とインスリン分泌能(HOMA-β)を評価します。これにより、体がどの程度インスリンに反応しているか、またはインスリンをどのくらい分泌しているかを確認することができます。
1. HOMA-IR(インスリン抵抗性)
HOMA-IRは、体がインスリンにどれだけ抵抗しているか、つまりインスリンの効果がどれくらい低下しているかを示す指標です。インスリン抵抗性が高いと、糖尿病のリスクが高まります。
HOMA-IRの計算式
HOMA-IR = 空腹時インスリン(μU/mL) × 空腹時血糖(mg/dL) ÷ 405
基準値
- 正常範囲:1.6以下
- インスリン抵抗性の可能性が高い:2.5以上
HOMA-IRが高い場合、体がインスリンに対して十分に反応しておらず、インスリン抵抗性があることを示唆しています。これが続くと、2型糖尿病のリスクが増加します。
2. HOMA-β(インスリン分泌能)
HOMA-βは、すい臓がインスリンをどれだけ分泌しているかを示す指標です。インスリンの分泌量が少ないと、血糖値が適切にコントロールできず、糖尿病が進行するリスクが高まります。
HOMA-βの計算式
HOMA-β = 360 × 空腹時インスリン(μU/mL) ÷ (空腹時血糖(mg/dL) - 63)
基準値
- 正常範囲:100%前後
- 低下している場合:80%以下
HOMA-βが低い場合、インスリンの分泌量が不足していることを示しており、特に1型糖尿病や進行した2型糖尿病においてこの値が低下することが確認されています。ほか、Insulinogenic Index (II)などの数値を用いることもあります。
厚生労働省 - 糖尿病に関する情報 日本糖尿病学会 -糖尿病について 国立国際医療研究センター - 糖尿病について
当院でのサポート
75gOGTT(ブドウ糖負荷試験)は、糖尿病や耐糖能異常を診断するための重要な検査です。この検査を通じて、空腹時や食後の血糖値を評価し、糖尿病や糖尿病予備軍の早期発見が可能となります。また、HOMA-IRとHOMA-βの測定により、インスリン抵抗性やインスリン分泌能の評価も行い、糖尿病のリスク評価や治療方針の決定に役立ちます。
糖尿病は早期発見・治療が重要であり、適切な管理を行うことで合併症のリスクを低減し、健康な生活を維持することが可能です。75gOGTTやHOMA評価は、糖尿病リスクを確認し、適切な治療を受けるために有効な手段です。
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監修者プロフィール
院長 山田 朋英 (Tomohide Yamada)
医学博士 (東京大学)
山田院長は、糖尿病・甲状腺・内分泌内科の専門医であり、東京大学で医学博士号を取得しています。東大病院での指導医としての経験や、マンチェスター大学、キングスカレッジロンドンでの客員教授としての国際的な研究経験を持ち、生まれ故郷の蒲田でクリニックを開院しました。
資格・専門性
- 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・研修指導医
- 日本内科学会 総合内科専門医
豊富な臨床と研究の経験を活かし、糖尿病や甲状腺疾患における最新の治療を提供しています。