無痛性甲状腺炎について
無痛性甲状腺炎は、甲状腺に発生した炎症により甲状腺細胞が破壊されることで、甲状腺ホルモンが血中に漏れ出し、一時的に甲状腺ホルモン値が高くなる疾患です。
多くの場合、時間の経過に伴って甲状腺ホルモン値は下がっていき、自然に改善していきます。甲状腺ホルモン自体は破壊されますが、疾患名から分かるように痛みは起こりません。
甲状腺ホルモンが分泌過多になるバセドウ病と鑑別する必要があります。
無痛性甲状腺炎の原因
橋本病や寛解中のバセドウ病に伴って起こることがよくあり、自己免疫疾患として考えられています。
出産から数ヶ月経ってから起こることもよくあり、そのケースでは「出産後甲状腺炎」と呼ばれます。
無痛性甲状腺炎の症状
血中の甲状腺ホルモンが増加するため、息切れや動悸、手の震え、体重減少、食欲亢進、暑がり、多汗、疲労感、イライラ、集中力の低下、軟便・下痢、生理不順などの症状を示します。なお、バセドウ病よりも軽症で、数ヶ月で治っていきます。
また、甲状腺ホルモンが一時的に低下することで甲状腺機能低下症となることがあり、この場合は、体温低下、疲労感、便秘などの症状を示します。 自覚症状が乏しいケースもあり、定期検査時にたまたま見つかることもあります。
無痛性甲状腺炎の検査
無痛性甲状腺炎の検査では、主に血液検査と超音波検査を行います。
血液検査では、血中の甲状腺ホルモン量と甲状腺自己抗体があるかどうかチェックします。超音波検査では、甲状腺のサイズ、甲状腺内部の見え方や血流、腫瘍の有無をチェックします。
血液検査により診断がつくことがほとんどですが、診断がつかない場合は、放射性ヨウ素やテクネシウムの摂取率検査やシンチグラフィなどの放射線検査を行います。
無痛性甲状腺炎の治療
自然に改善していくため基本的に経過観察での対応となりますが、動悸症状を強く示す場合は、β遮断薬によって動悸を緩和させます。
また、バセドウ病とは異なる疾患のため、バセドウ病で使用される抗甲状腺薬(メルカゾール®、プロパジール®、チウラジール®、)は無痛性甲状腺炎には効果がありません。使ってしまった場合、効果を示すことがなく、むしろ副作用のリスクがあります。
甲状腺機能の低下が顕著に見られる場合は、甲状腺ホルモン剤であるチラーヂンS®の内服によりホルモンを補充します。