発症数が多い、甲状腺乳頭がんとは?

甲状腺乳頭がんとは

甲状腺乳頭がんとは甲状腺がんには、悪性リンパ腫、甲状腺未分化がん、甲状腺髄様がん、甲状腺濾胞がんなどがありますが、甲状腺乳頭がんはその1つで一番発症数が多いです。

病名に「乳頭」とありますが、顕微鏡で見たときにがん細胞が集まって乳頭のような形状となるので、この疾患名となりました。そのため、胸部の乳腺とは無関係です。比較的女性に起こりやすく、10~80代まで様々な年代で発症が確認されています。原因ははっきりとは判明していませんが、2~5%程度は家族内発症です。

生存率は他のがんに比べて高く、9割以上の方は再発することはありません。

甲状腺未分化癌と甲状腺乳頭癌について:わかりやすい説明

甲状腺乳頭がんの特徴

  • 成長スピードは遅い
  • 頚部のリンパ節に転移しやすいい
  • 一方、骨や肺などの遠隔臓器への転移はあまりない
  • 進行に伴って、声を出す神経(反回神経)や気管にまで広がることがあるい

ステージはIからIVまでに分かれており、ステージが上がるに伴ってがんが進行していることを意味します。一般的に、術後10年で再発率は、ステージI で7%、 IIで17%、III で31%となります。また、死亡確率は、Iで0%、IIで4%、Ⅲで8%となります。なお、遠隔転移したIVでは、死亡確率が67%まで上昇します。

自覚症状・検査

自覚症状・検査痛みなどの自覚症状は乏しく、症状が現れたとしても、甲状腺のしこりやリンパ節の腫れに留まります。しこりもサイズが大きくなるまで気づかないことが多く、検査が遅れてしまうことがよくあります。

検査では、超音波検査、血液検査、細胞診、CT検査などを実施します。

治療

サイズが1cm以下の甲状腺がんは微小がんと呼ばれます。リンパ節や遠隔臓器への転移が起きていない、甲状腺外にまで病変が広がっていない低リスクの微小がんの大半は、『進行しない』もしくは『進行してもスピードは遅い』です。

微小がん以外のケースでは手術による治療が一般的です。手術では、甲状腺切除とリンパ節郭清が行われますが、がんの進行度によって手術範囲は変わってきます。手術が終わった後は甲状腺ホルモン剤を投与します。甲状腺を全て摘出した場合はビタミンD製剤を使用することもあります。

手術によって合併症が起こることもあり、例えば、高い声・大声を出しづらい、かすれ声、リンパ液の漏出、出血などが挙げられます。なお、出血の確率は約1%と非常に少ないです。甲状腺を全摘出した場合、低カルシウム血症が起こり、指先に痺れが生じることもあります。手術はこれらの合併症に注意を払いながら進める必要があります。

退院後は定期的に超音波検査や血液検査を行って、再発の有無を確認したり、お薬の量を管理したりします。10~15年ほどは再発する恐れがあるため、その間は経過観察が必要になります。ただ、基本的に予後は良好で、特に若者は経過が順調なことが多いです。

※手術が必要な場合は適切な医療機関を紹介いたします。

甲状腺乳頭がんは遺伝することもある

甲状腺乳頭がんは遺伝することもある甲状腺乳頭がんの2~5%は家族内発症と考えられています。原因の1つに遺伝が挙げられ、相対的に若者によく見られます。家族歴のある症例は、ない症例と比べて、甲状腺内にがんが多発しやすいという特徴があります。

また、片葉(甲状腺の左右の羽根の部分)を切除した場合、残った甲状腺にがんが再発する確率は5%となり、家族歴のない方よりも約5倍リスクが高いと判明しています。甲状腺の切除範囲は、このリスクを考慮して決めていくことが大切です。家族性甲状腺乳頭がんは発生する頻度は少ないですが、早期に見つけて治療を行うことが大切なので、家族歴がある方は甲状腺検査を受けておくことが推奨されます。

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