そもそも亜急性甲状腺炎とは
亜急性甲状腺炎とは、甲状腺で炎症が発生し、甲状腺組織が破壊される疾患です。
甲状腺の破壊によって、甲状腺ホルモンが血中に漏れ出し、血中の甲状腺ホルモン濃度が高くなります。風邪などの後に起こることが多く、ウイルス感染が原因となることがあります。炎症は長引きますが自然に改善していき、血中の甲状腺ホルモンの働きが過剰になる状態(甲状腺中毒症)も改善します。
遺伝も関係していると考えられており、10~30年後に再発する可能性もあります。
亜急性甲状腺炎の原因
亜急性甲状腺炎の原因は完全には解明されていませんが、ウイルス感染が関与していると考えられています。風邪やインフルエンザ、ムンプス(おたふく風邪)などのウイルス感染をきっかけに発症するケースが多く、感染後に体の免疫反応が過剰に働き、甲状腺の炎症を引き起こすとされています。亜急性甲状腺炎は季節性があり、特に春や秋に多く見られることから、ウイルス感染が関与している可能性が高いと考えられます。
また、亜急性甲状腺炎は自己免疫疾患ではないため、通常の甲状腺疾患とは異なり、自己抗体が原因でない点が特徴です。発症すると甲状腺が一時的に腫れ、痛みを伴い、発熱や疲労感など全身症状も現れることが多く、数週間から数か月で自然に回復するケースもありますが、適切な治療が必要な場合もあります。
亜急性甲状腺炎の症状
亜急性甲状腺炎は、一時的に強い炎症が起こりますが、時間の経過に伴って治まっていきます。
(1)炎症による症状
甲状腺の痛み
痛みの程度は様々で、甲状腺付近を触った時や嚥下時に痛みを覚える程度の場合もありますし、安静時でも耳や胸部まで痛みが拡がることもあります。
甲状腺の腫れ
甲状腺全体、もしくは左右どちらかが腫れて硬くなります。
腫れや痛みは、時間の経過に伴って症状が現れている部位が移動します。
発熱
微熱~高熱までお客様によって異なります。
※発熱が認められないケースもあります。
(2)甲状腺ホルモンによる症状
甲状腺に発生した炎症により、甲状腺ホルモンを分泌する濾胞細胞が破壊され、甲状腺ホルモンが血中に漏れ出します。
その結果、血中の甲状腺ホルモン濃度が上昇し、バセドウ病と同様の症状(息切れ、動悸など)を示します。
血中の甲状腺ホルモン濃度の上昇は一時的なもので、時間の経過に伴って低下していき、いずれ正常値の範囲内に収まります。
亜急性甲状腺炎の診断
亜急性甲状腺炎のお客様は、「首に痛みがある」と訴えられることが多いです。
当院では、最初に問診にて症状の内容などを詳しくお伺いし、その後、触診にて甲状腺に痛みを伴う腫れがあるかチェックします。
亜急性甲状腺炎の可能性がある場合、甲状腺超音波検査で詳しく調べます。痛む箇所に黒い影が見られれば、確定診断を下します。
また、血液検査を行って、炎症反応を示す項目(CRPや白血球)、甲状腺ホルモンの数値(FT3・FT4)が上昇していないか確認します。FT3・FT4は、炎症による甲状腺組織が破壊されることで一時的に上昇するものの、時間の経過に伴って低下していき、いずれ正常値の範囲内に収まります。
反対に、甲状腺組織が破壊されることにより、甲状腺ホルモンが一時的に低下することもあります。また、可能性としては少ないですが、甲状腺機能低下症が生涯にわたって続くことになり、チラーヂンを使用した薬物療法が必要となることもあります。
亜急性甲状腺炎の治療
亜急性甲状腺炎は一時的なもので、そのままにしていても自然に改善していきます。
しかし、痛みや発熱が生じることもよくあり、症状が強くなることもあるので、治療を受けることが推奨されます。
当院では、状態に応じて痛み止めを処方しており、なかなか改善しない場合はステロイド治療を行っています。
治療中の過ごし方
亜急性甲状腺炎の改善には、運動を控えて安静にすることが大切です。
軽症の場合は自然に症状が緩和することもありますが、強い痛みや高熱が起きている場合、または甲状腺ホルモンが高値を示し頻脈が起きている場合は、適切なお薬を用いた薬物療法を行います。
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監修者プロフィール
院長 山田 朋英 (Tomohide Yamada)
医学博士 (東京大学)
山田院長は、糖尿病・甲状腺・内分泌内科の専門医であり、東京大学で医学博士号を取得しています。東大病院での指導医としての経験や、マンチェスター大学、キングスカレッジロンドンでの客員教授としての国際的な研究経験を持ち、生まれ故郷の蒲田でクリニックを開院しました。
資格・専門性
- 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・研修指導医
- 日本内科学会 総合内科専門医
豊富な臨床と研究の経験を活かし、糖尿病や甲状腺疾患における最新の治療を提供しています。