甲状腺に痛みがある方はご相談ください
甲状腺を押した時に痛みがあると、病気かどうか不安になることでしょう。
今回は、甲状腺の辺りに痛みを感じる場合に考えられる病気について解説します。
また、気を付けなければならない症状や医療機関受診の目安もお伝えします。
目次
甲状腺を押した時の痛みは「亜急性甲状腺炎」が原因かも
亜急性甲状腺炎とは、発熱や痛みなどが生じる甲状腺の炎症疾患です。硬いしこりのように大きくなった甲状腺を押した時に痛みを伴います。
原因はウイルス感染だと考えられていますが、現時点では明らかになっていません。風邪に似た状態の2~3週間ほど後に、急に症状を示す場合が多いと言われています。
亜急性甲状腺炎の主な症状
下記の症状に当てはまる場合は、亜急性甲状腺炎が考えられます。
- 甲状腺の腫れがある
- 甲状腺を押した時に痛みがある
- 汗が出て、脈が速くなる
- 片方だけにのどの痛みがある
- 全身倦怠感が見られる
片側の甲状腺が腫れることが多いのですが、後にもう一方も腫れる場合があります。
亜急性甲状腺炎が疑われる場合
甲状腺の腫れや、押した時の痛みなどの症状が見られ、亜急性甲状腺炎が考えられる時は、医療機関をご受診ください。
症状が軽い場合は特に治療を行わなくても軽快するケースもありますが、耳鼻咽喉科や内分泌内科など専門医の診察を受けることをお勧めします。 先にかかりつけの内科受診でも構いません。
亜急性甲状腺炎の治療
亜急性甲状腺炎では超音波検査や血液検査を行い、診断がつけば基本的に対症療法が実施されます。
症状が軽い場合は、痛みや炎症に効くお薬を使い、重い場合は、多くのケースでステロイド薬が用いられます。
日常生活における注意点
甲状腺を押した時に痛みが生じる場合は、ハードなスポーツなど身体を疲れさせる活動は控えて、できるだけゆっくりとお過ごしください。また、腹式呼吸による深い呼吸を心がけましょう。 酸素が身体の隅々まで行きわたることで自律神経の働きが改善され、免疫機能の維持に効果があると言われています。
その他に考えられる病気
甲状腺を押した時に痛みを感じる場合、亜急性甲状腺炎以外にも下記の病気が考えられます。
- 急性化膿性甲状腺炎
- 橋本病(慢性甲状腺炎)
- 甲状腺腫瘍
病気の概略
急性化膿性甲状腺炎 | 細菌に感染して炎症が起こり、甲状腺の痛みを呈する病気です。 |
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橋本病(慢性甲状腺炎) | 甲状腺に慢性的な炎症が起こり、甲状腺ホルモンの分泌が低下する病気です。 |
甲状腺腫瘍 | 甲状腺に生じた腫瘍です。 |
急性化膿性甲状腺炎
急性化膿性甲状腺炎とは、甲状腺の細菌感染による急性炎症です。
原因はのどの細菌で、甲状腺に炎症が起きるため痛みを呈します。
発症しやすい方
小児や若年層に多く発症します。
急性化膿性甲状腺炎の主な症状
- 甲状腺に痛みがある
- 甲状腺が腫れる
- 物を飲み込むと痛い、嚥下痛がある
- のど周辺の皮膚が熱っぽく腫れて赤い(特に左側)
急性化膿性甲状腺炎が疑われる場合
適切な治療を受けるため、耳鼻咽喉科や内分泌内科をご受診ください。
抗生物質による薬物療法や、皮膚を切って貯留した膿を出す排膿が実施されます。根治治療を行わないまま様子を見ていると、再発のリスクが高まります。
橋本病(慢性甲状腺炎)
橋本病とは、自己免疫機能の障害のため、慢性的な甲状腺の炎症が生じて甲状腺が破壊され、甲状腺ホルモン分泌が低下する疾患です。
そのため、代謝機能が下がり、息切れや疲労感など多様な症状を呈します。
発症しやすい方
発症者の多くは、20~40代の女性です。
その他の要因として、
- 喫煙の習慣
- 疲労の蓄積
- ストレス過多
なども挙げられています。
橋本病(慢性甲状腺炎)の主な症状
- のどの違和感
- 甲状腺の腫れ
- 筋力低下や筋肉疲労
- 疲労感や倦怠感
- 冷え
- 息切れ
- 舌の肥大
- 身体全体の浮腫
- 抜け毛
- 皮膚の乾燥
- 便秘
- 無排卵や無月経
- 激しい眠気
- 無気力、頭が働かない、物忘れの増加
橋本病(慢性甲状腺炎)が疑われる場合
早期に、耳鼻咽喉科や内分泌内科をご受診ください。
治療を受けずに様子を見ていると、持続する疲労感や倦怠感などに対処できず、日々の生活に障害がでる場合があります。
日常生活での注意点
お食事では、ひじきや昆布などの海藻類の食べ過ぎにご注意ください。
海藻にはヨード(ヨウ素)が多く、摂取量が多いと甲状腺機能の低下に繋がる場合があります。通常召し上がる分は構いませんので、量にお気を付けください。
甲状腺腫瘍
甲状腺を押した時に痛みを感じる場合、甲状腺に腫瘍が生じているケースもあります。
甲状腺にできる腫瘍として、
- 腺腫様甲状腺腫
- 濾胞腺腫
- 甲状腺嚢胞
などが挙げられます。
腺腫様甲状腺腫(せんしゅようこうじょうせんしゅ)とは
甲状腺の細胞が過剰に増え、しこり状になる病気で、食道や気管を押す場合があります。
基本的に良性ですが、がんが一部にできていることもあります。
濾胞腺腫(ろほうせんしゅ)とは
甲状腺内部に生じる痛みを伴わない良性腫瘍です。
大きくなるスピードが遅いという特徴があります。
甲状腺嚢胞(こうじょうせんのうほう)とは
甲状腺内部に液体が貯留した袋状のしこりができる病気です。
大半は痛みがないものの、痛みが生じるものや急に大きくなるものもあります。また、がんが原因で嚢胞ができる場合もあります。
発症しやすい方
発症者の多くは、20~50代の女性です。
甲状腺腫瘍の主な症状
- 甲状腺全体、あるいは一部分が腫れる
- 甲状腺にしこり状のものができる
- のどに違和感があり、物を飲み込みにくい
甲状腺腫瘍が疑われる場合
早期に耳鼻咽喉科や内分泌内科までご相談ください。
医療機関の受診を行わず様子を見ていると、がんの発生に気付かず、進行して予後にかかわる恐れもあります。
甲状腺を押した時の痛みは、医療機関にご相談ください
甲状腺を押した時に痛みを感じる場合、思い当たることがなくても、耳鼻咽喉科や内分泌内科をご受診ください。
また、かかりつけの内科医に相談することもお勧めです。
医療機関の受診によりお困りの症状に対する診断がつき、治療を始めることで、痛みの軽減や症状の進行を防ぐことが可能になります。
受診時のポイント
受診時に下記の項目を医師に伝えると、診察の参考になります。
- 現在見られる症状
- 現在最もお悩みの症状
- 症状を自覚した時期
- 喫煙や飲酒の習慣
- 治療中の病気
- 服用中のお薬
- 睡眠時間や日中の眠気など
- 甲状腺疾患の親族がいるかどうか
- 妊娠の有無