甲状腺の疾患は「甲状腺刺激ホルモン(TSH)」から判断する
甲状腺機能を評価する目的で測定する項目には、甲状腺ホルモン(FT3・FT4)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)があります。なかでも、TSHが最も信頼性が高いです。
ホルモン検査は、免疫反応を利用して測定するため、精度を安定化させるのが特に難しいです。また、基準値は検査する施設及び検査キットによって変わるので、検査を行う施設の基準値と照合して評価を行うことになります。特殊な疾患を除外した場合、TSHが低値を示す場合は甲状腺機能亢進症が疑われ、逆に高値を示す場合は甲状腺機能低下症が疑われるのが一般的です。
血中の甲状腺ホルモンが過多になっている場合、脳下垂体がそれを感知して甲状腺刺激ホルモンの分泌を減らし、不足している場合は甲状腺ホルモンの分泌が多くなります。
甲状腺刺激ホルモン(TSH)の役割
脳下垂体では、血中の甲状腺ホルモンが一定に保てるように常に監視しています。甲状腺ホルモンが不足している場合、脳下垂体から甲状腺刺激ホルモン(TSH)が分泌され、甲状腺を刺激して甲状腺ホルモン(T3・T4)の分泌量を多くします。
反対に、血中の甲状腺ホルモンが過多になっている場合、甲状腺刺激ホルモンの分泌がストップし、甲状腺ホルモンが少なくなります。この甲状腺ホルモンを調整する仕組みはフィードバック機構と呼ばれます。これにより、血中の甲状腺ホルモンは正常値に保たれます。
甲状腺刺激ホルモン(TSH)の高値・低値
TSHが高いと言われたら
検査を受けてTSHが高値を示していると指摘された場合、潜在性甲状腺機能低下症が疑われます。
潜在性甲状腺機能低下症とは、甲状腺ホルモンが若干足りていない状態です。甲状腺ホルモン(サイロキシン、遊離サイロキシン)がほぼ正常ですが、脳の下垂体や視床下部が、甲状腺ホルモンが若干不足していると察知し、下垂体から分泌されるTSHが基準値以上に高値を示す状態です。潜在性甲状腺機能低下症は、顕性甲状腺機能低下症の予備軍と考えられています。
潜在性の場合も、必要に応じてホルモンを補充する治療が実施されます、潜在性甲状腺機能低下症は日本の人口全体のうち4~15%が発症していると言われており、比較的女性によく見られ、年齢を重ねるごとにリスクは高まっていきます。