バセドウ病とは?
バセドウ病は、甲状腺が過剰にホルモンを分泌することで発症する自己免疫疾患です。甲状腺は、首の前面に位置し、全身の代謝を調整する甲状腺ホルモンを生成しています。バセドウ病では、免疫システムが誤って甲状腺を刺激し続け、その結果、甲状腺ホルモンが過剰に生成されます。これが、体内の代謝を異常に活発にさせ、多くの症状を引き起こします。
主な症状には以下のようなものがあります:
- 動悸や心拍数の増加:心臓が速く鼓動し、不整脈を感じることがあります。
- 体重減少:食欲が増しても体重が減ることが多いです。
- 暑さに敏感になる:汗をかきやすく、暑さを感じやすくなります。
- 手の震えや神経過敏:手が震えたり、精神的に不安定になることがあります。
- 眼球突出(甲状腺眼症):目が飛び出して見える、視力の変化があるなどの眼の症状も見られます。
バセドウ病は、特に20代から40代の女性に多く見られますが、誰にでも発症する可能性があります。早期に診断され、適切な治療を受けることで症状を管理することができるものの、生活習慣や食事が症状の悪化や改善に大きく影響を与えるため、特に食事に注意を払うことが重要です。
たとえるなら、バセドウ病は「エンジンがずっとフルスピードで回り続けてしまう車」のような状態です。このエンジンを落ち着かせるために、適切な燃料(食事)を選ぶことが必要です。
食べてはいけない食品とは?
バセドウ病を患っている方は、特に「ヨウ素」を多く含む食品の摂取を控えることが重要です。ヨウ素は甲状腺ホルモンの生成に必要なミネラルであり、通常であれば体にとって必要な栄養素です。しかし、バセドウ病の場合、すでに過剰な甲状腺ホルモンが生成されているため、さらにヨウ素を摂取すると甲状腺がより刺激され、ホルモンの生成が増加し、症状が悪化する可能性があります。
ヨウ素を多く含む食品
- 海藻類:昆布、わかめ、ひじき、もずくなどの海藻類はヨウ素を非常に多く含んでいます。昆布を使用しただしや乾燥昆布の摂取は特に注意が必要です。
- 魚介類:ヨウ素は魚介類にも含まれています。特にあさり、牡蠣、タラなどの魚や貝類はヨウ素の含有量が高いので、控える必要があります。
- ヨウ素添加の塩:一部の国では、塩にヨウ素が添加されていることがありますが、日本では通常の食塩にはヨウ素が含まれていません。しかし、輸入食品や特定の加工食品にはヨウ素が含まれている可能性があるため、成分表示を確認することが大切です。
ヨウ素を含む食品を摂取すると、甲状腺がさらに刺激され、ホルモンの分泌が過剰になり、バセドウ病の症状が悪化することがあるため、摂取量を管理することが非常に重要です。
他に注意が必要な食品
バセドウ病の方が注意すべき食品は、ヨウ素を多く含む食品だけではありません。食事全体にわたって、甲状腺や全身の健康に影響を与える可能性のある食品を意識することが大切です。
1. カフェインを多く含む食品
カフェインは、バセドウ病による動悸や神経過敏を悪化させることがあります。カフェインは中枢神経を刺激し、心拍数を増加させるため、バセドウ病の症状を悪化させるリスクがあります。以下の食品はカフェインを多く含むため、摂取を控えるか、量を減らすことが推奨されます。
- コーヒー、紅茶、緑茶
- エナジードリンクや炭酸飲料
- チョコレート
2. 大豆製品
大豆には「ゴイトロゲン」と呼ばれる成分が含まれており、この成分は甲状腺ホルモンの生成を阻害する可能性があります。大豆製品そのものは健康に良いとされる食品ですが、バセドウ病の患者にとっては、過剰な摂取が甲状腺の機能に影響を与えることがあるため、適量を守ることが重要です。
- 豆腐、納豆、味噌、醤油
- 大豆サプリメント
ゴイトロゲンは、加熱によって影響を軽減することができますが、特に生の大豆製品には注意が必要です。
3. 高脂肪食品や加工食品
高脂肪食品や加工食品は、甲状腺ホルモンのバランスに悪影響を与えることがあります。バセドウ病の患者は、健康的な体重を維持することが大切ですが、過剰な脂肪摂取は代謝をさらに混乱させることがあります。以下のような食品は摂取を控えましょう。
- ファーストフードや揚げ物
- 加工肉(ソーセージ、ベーコンなど)
- 高カロリーのスナック菓子
何を食べたら良いの?
バセドウ病の患者は、バランスの取れた食事を心がけ、甲状腺の機能をサポートする食品を積極的に摂取することが重要です。特に、甲状腺ホルモンの代謝を助ける栄養素や、免疫系の健康を促進する食品を意識して取り入れると良いでしょう。
1. セレンを多く含む食品
セレンは、甲状腺の機能をサポートする重要なミネラルです。抗酸化作用を持ち、免疫系を強化する働きがあるため、バセドウ病の症状緩和に役立ちます。
- ナッツ類(特にブラジルナッツ)
- 全粒穀物
- 鶏肉、魚(ヨウ素の含有量が少ないものを選ぶ)
2. 抗酸化物質を多く含む食品
抗酸化物質は、体内の炎症を抑える働きがあり、バセドウ病の患者にとって有益です。特に、ビタミンCやビタミンEを多く含む食品を積極的に摂取しましょう。
- ベリー類(ブルーベリー、ラズベリー、イチゴなど)
- 緑黄色野菜(ブロッコリー、キャベツ、ほうれん草など)
- オリーブオイル、ナッツ類
3. ビタミンDやカルシウムを豊富に含む食品
バセドウ病は、骨の健康にも影響を与えることがあり、特にカルシウムやビタミンDの摂取が重要です。これらの栄養素をしっかり摂取することで、骨密度の低下を防ぐことが期待できます。
- 乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズなど)
- 卵黄、魚(サーモンなど)
- 強化されたシリアルやジュース
健康的な食事を心がけ、栄養バランスを整えることで、甲状腺の機能をサポートし、症状を管理することが可能です。特定の食品を避けるだけでなく、積極的に体に良い食品を取り入れることが大切です。
当院でのサポート
当院では、バセドウ病の患者様に対して、包括的なサポートを提供しています。食事療法は、バセドウ病の治療や症状管理において非常に重要な役割を果たします。当院では、患者様一人ひとりの症状やライフスタイルに合わせた食事アドバイスを行い、健康的な生活をサポートします。
1. 専門的な診断と治療
まず、バセドウ病の診断には、血液検査を通じて甲状腺ホルモンのレベルを確認します。その結果に基づいて、最適な治療法を提案し、ホルモンバランスを整えるための薬物療法や、必要に応じたアイソトープ療法などを提供します。必要に応じて外部の専門医療機関を紹介することもあります。
また、当院では当日30分から40分で甲状腺ホルモンの結果がわかるよう検査体制を整えております。
2. 栄養指導
当院では、栄養士や内分泌内科の専門医が連携し、バセドウ病の患者様に最適な食事プランを提案しています。甲状腺の健康を考慮し、ヨウ素の摂取量を適切に管理するための具体的なアドバイスを行い、栄養バランスの取れた食事をサポートします。(現在サービスの提供を一時停止しております。)
3. 長期的なフォローアップ
バセドウ病は慢性的な病気であるため、定期的なフォローアップが重要です。当院では、治療後も患者様の甲状腺機能を継続的にモニタリングし、食事やライフスタイルの改善をサポートしながら、症状の改善と再発予防に努めています。
バセドウ病に関する食事管理や健康維持についてお悩みの方は、ぜひ当院にご相談ください。専門の医療チームが、あなたの健康を全力でサポートいたします。
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監修者プロフィール
院長 山田 朋英 (Tomohide Yamada)
医学博士 (東京大学)
山田院長は、糖尿病・甲状腺・内分泌内科の専門医であり、東京大学で医学博士号を取得しています。東大病院での指導医としての経験や、マンチェスター大学、キングスカレッジロンドンでの客員教授としての国際的な研究経験を持ち、生まれ故郷の蒲田でクリニックを開院しました。
資格・専門性
- 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・研修指導医
- 日本内科学会 総合内科専門医
豊富な臨床と研究の経験を活かし、糖尿病や甲状腺疾患における最新の治療を提供しています。