バセドウ病ってどんな病気?
「バセドウ病」という病気を聞いたことがありますか?バセドウ病は、甲状腺が過剰に働きすぎることで体にいろいろな影響が出る病気です。では、この病気は遺伝するのでしょうか?このページでは、バセドウ病と遺伝の関係についてわかりやすく説明します。
たとえるなら、バセドウ病は「エンジンが常にフルスピードで回り続けてしまう車」のような状態です。体が休む暇もなくエネルギーを使い続けるため、いろいろな不調が現れるのです。
バセドウ病は、甲状腺の働きが過剰になる自己免疫疾患の一つで、正式には「甲状腺機能亢進症」と呼ばれます。甲状腺は首の前面に位置する小さな臓器で、代謝を調整する重要なホルモンを分泌します。バセドウ病では、免疫システムが誤って甲状腺を攻撃し、その結果として甲状腺ホルモンが過剰に分泌されます。これにより、体の代謝が異常に活発になり、さまざまな症状が現れます。
バセドウ病は主に20代から40代の女性に多く見られますが、男性や高齢者、子どもにも発症する可能性があります。症状としては、動悸や手の震え、体重減少、暑がり、目の突出(眼球突出)などが見られることが一般的です。これらの症状は、甲状腺ホルモンが代謝を異常に高めるために引き起こされます。
バセドウ病の主な症状
- 動悸や心拍数の増加:心臓が速く鼓動する、または不整脈が生じることがあります。
- 体重減少:食事量が変わらないにもかかわらず、体重が急激に減ることがあります。
- 手の震え:緊張したりせずとも手が震えることがあります。
- 疲労感や脱力感:体力がなく、簡単な作業でも疲れやすいと感じます。
- 眼球突出:バセドウ病の特徴的な症状の一つで、目が飛び出したように見える状態が現れることがあります。
バセドウ病は、早期に発見して適切な治療を行うことで、症状を管理し、日常生活を快適に送ることができます。しかし、放置すると心臓や骨の健康に影響を与えることもあるため、注意が必要です。
たとえるなら、バセドウ病は「エンジンが常にフルスピードで回り続けてしまう車」のような状態です。体が休む暇もなくエネルギーを使い続けるため、いろいろな不調が現れるのです。
バセドウ病は遺伝するの?
バセドウ病は、遺伝的な要因と環境的な要因が複雑に絡み合って発症する病気です。したがって、完全に遺伝性の病気というわけではありませんが、遺伝的素因が関与していることは確認されています。具体的には、バセドウ病を持つ家族がいる場合、その家族の他のメンバーも発症するリスクが高くなることが知られています。
遺伝的な要因が発症に影響を与えるとはいえ、それだけでバセドウ病になるわけではありません。環境的な要因、例えば感染症やストレス、喫煙なども、バセドウ病の発症に関与することがわかっています。バセドウ病は、遺伝的な素因を持っている人が、何らかの環境的な要因によって発症するというモデルで理解されています。
遺伝の影響を受けやすい人の特徴
- 家族歴がある場合:バセドウ病や他の自己免疫疾患を持つ家族がいる場合、リスクが高まります。
- 自己免疫疾患の既往歴がある場合:バセドウ病以外の自己免疫疾患(例:1型糖尿病、関節リウマチなど)を持つ人は、他の自己免疫疾患を発症するリスクも増加します。
- 女性:女性の方が男性よりも自己免疫疾患にかかりやすく、バセドウ病もその例外ではありません。
バセドウ病が完全に遺伝する病気ではないとはいえ、家族に同じ疾患を持つ人がいる場合は、発症のリスクを考慮し、定期的に甲状腺の状態を確認することが推奨されます。
たとえるなら、遺伝は「家族で同じエンジンを使っているようなもの」で、同じエンジンを持っていると、同じトラブルが起こる可能性があるということです。ただし、そのエンジンが必ず壊れるわけではなく、他の要因が重なったときにトラブルが起こることがあります。
厚生労働省 - 甲状腺の病気に関する情報
日本甲状腺学会 - 甲状腺疾患について
日本内分泌学会 - 甲状腺疾患について
バセドウ病の予防はできる?
バセドウ病は、遺伝的要因と環境的要因が影響するため、完全に予防することは難しいとされています。しかし、環境的なリスク要因を減らすことで、発症リスクを低減することは可能です。以下に、バセドウ病の発症リスクを減らすためにできることをいくつか挙げます。
1. ストレス管理
ストレスは、自己免疫疾患の発症に影響を与えると考えられています。過度のストレスを避け、リラクゼーション法(ヨガ、瞑想、呼吸法など)を取り入れることで、免疫システムを健康に保つことができます。特に、生活習慣や仕事においてストレスを感じやすい方は、定期的に心身のリフレッシュを図ることが大切です。
2. 喫煙を避ける
喫煙は、バセドウ病を含むさまざまな自己免疫疾患の発症リスクを高めることが知られています。特に、バセドウ病の合併症である「甲状腺眼症」のリスクを増加させるため、禁煙することが推奨されています。もし喫煙習慣がある場合は、健康のためにも禁煙を検討することが大切です。
3. 適切なヨウ素摂取
甲状腺の健康にとってヨウ素は必要不可欠な栄養素ですが、過剰摂取は逆に甲状腺の問題を引き起こすことがあります。バセドウ病のリスクを持つ人は、ヨウ素を含む食品やサプリメントの摂取量に注意し、適切なバランスを保つことが重要です。特に、海藻類を過剰に摂取することは避けるべきです。
バセドウ病の予防は難しいですが、上記のようなライフスタイルの改善を通じて、リスクを減らすことができます。
遺伝が気になる場合はどうする?
バセドウ病の遺伝的要因が気になる場合、家族歴を確認することが最初のステップです。家族にバセドウ病や他の自己免疫疾患を持つ人がいる場合、リスクが高まる可能性があります。遺伝的なリスクがある場合でも、早期発見や適切な管理を行うことで、症状を効果的にコントロールすることが可能です。
1. 家族歴の確認
バセドウ病や他の自己免疫疾患を持つ家族がいる場合、その情報を医師に伝えることが重要です。家族歴があると、定期的な検査やフォローアップが推奨されることがあります。
2. 定期的な検査
バセドウ病は、血液検査によって甲状腺ホルモン(T3、T4)や甲状腺刺激ホルモン(TSH)の異常を確認することができます。特に、遺伝的なリスクがある場合は、症状が現れる前に定期的な血液検査を行い、早期発見を目指すことが大切です。
3. 医師との相談
遺伝的なリスクが気になる場合は、専門医に相談することが重要です。家族歴を共有し、リスクに基づいた予防的なアプローチを取ることが可能です。バセドウ病は進行すると症状が悪化する可能性がありますが、早期に発見し治療を開始することで、健康を維持することができます。
家族歴があるからといって必ずバセドウ病を発症するわけではありませんが、リスクを理解し、必要な対策を取ることが、健康管理の鍵となります。
早期に発見すれば、症状が軽いうちに治療を始めることができるので、安心して日常生活を送ることができます。たとえるなら、エンジンに不安がある場合は、早めに整備士に見てもらうことで、大きなトラブルを防げるのと同じです。
当院でのサポート
当院では、バセドウ病の診断と治療において、専門的なサポートを提供しています。遺伝的なリスクや家族歴を持つ患者様に対して、早期発見と適切な治療を通じて健康を維持できるように支援しています。以下に、当院でのサポート内容をご紹介します。
1. 専門的な診断
バセドウ病の診断には、血液検査や甲状腺の超音波検査が重要です。当院では、甲状腺ホルモンの異常を確認するための血液検査を行い、必要に応じて超音波検査を実施しています。家族歴がある場合やリスクを感じている場合は、定期的な検査を通じて早期に異常を発見します。また、30分から40分で迅速に甲状腺ホルモンの結果が分かる検査機器を導入しております。
2. 個別にカスタマイズされた治療プラン
バセドウ病の治療は、患者様の状態に応じた個別の治療プランが重要です。当院では、抗甲状腺薬や放射性ヨウ素療法、手術など、最適な治療法を提案し、患者様一人ひとりに合わせた治療を行っています(治療内容によっては他の専門医療機関にご紹介します)。
3. 生活習慣の指導
バセドウ病の予防や管理には、生活習慣の改善も重要です。当院では、適切な栄養管理やストレスの管理方法についても指導し、健康的な生活をサポートしています。特に、ヨウ素の過剰摂取を避けるための食事指導も行っています。
4. 継続的なフォローアップ
バセドウ病は、治療後も定期的なフォローアップが必要です。当院では、定期的な検査を通じて甲状腺ホルモンのバランスを確認し、治療の効果をモニタリングします。長期的なサポートを通じて、患者様が健康を維持できるようサポートいたします。
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バセドウ病は、遺伝的な要因と環境的な要因が絡み合って発症する自己免疫疾患です。家族にバセドウ病や他の自己免疫疾患を持つ人がいる場合、発症リスクが高まる可能性がありますが、完全に遺伝する病気ではありません。リスクを理解し、定期的な検査や生活習慣の改善を通じて予防することができます。
当院では、バセドウ病の診断、治療、予防に関して専門的なサポートを提供しています。遺伝的なリスクが気になる方や、バセドウ病に関するお悩みがある方は、ぜひ当院にご相談ください。
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監修者プロフィール
院長 山田 朋英 (Tomohide Yamada)
医学博士 (東京大学)
山田院長は、糖尿病・甲状腺・内分泌内科の専門医であり、東京大学で医学博士号を取得しています。東大病院での指導医としての経験や、マンチェスター大学、キングスカレッジロンドンでの客員教授としての国際的な研究経験を持ち、生まれ故郷の蒲田でクリニックを開院しました。
資格・専門性
- 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・研修指導医
- 日本内科学会 総合内科専門医
豊富な臨床と研究の経験を活かし、糖尿病や甲状腺疾患における最新の治療を提供しています。