子宮卵管造影検査と甲状腺機能への影響

子宮卵管造影検査とは?

 

子宮卵管造影検査(HSG)は、不妊症の診断において重要な検査の一つで、卵管の通過性や子宮の状態を確認するために行われます。この検査では、造影剤を子宮内に注入し、X線撮影によって卵管が詰まっていないかを確認します。卵管が詰まっていると精子が卵子に到達できず、受精が難しくなるため、この検査は不妊治療の初期段階でよく実施されます。

HSGは比較的簡単な手技ですが、使用される造影剤が甲状腺機能に影響を与える可能性があるため、甲状腺に問題がある患者にとっては特別な注意が必要です。当院では、このようなリスクを事前に把握し、最適な治療計画を提案することを心掛けています。

甲状腺機能低下症と妊娠・不妊治療

造影剤と甲状腺機能の関係

子宮卵管造影検査で使用される造影剤には、ヨード(ヨウ素)が含まれています。ヨードは甲状腺ホルモンの合成において重要な役割を果たしていますが、過剰に摂取すると甲状腺ホルモンの分泌が抑制される可能性があります。甲状腺機能が正常でない場合、この造影剤が甲状腺機能に影響を与え、ホルモンバランスが乱れることがあります。

甲状腺機能低下症やバセドウ病など、既に甲状腺の問題を抱えている患者は特に注意が必要です。造影剤の種類によっては、甲状腺ホルモンのレベルを著しく変動させるリスクがあり、検査前に甲状腺の状態を正確に把握することが推奨されます。

厚生労働省 - 甲状腺の病気に関する情報

日本甲状腺学会 - 甲状腺疾患について

日本内分泌学会 - 甲状腺疾患について

 

水溶性と油性造影剤の違い

HSGで使用される造影剤には、水溶性と油性の二つのタイプがあります。それぞれが異なる特性を持ち、甲状腺機能への影響も異なります。

  1. 水溶性造影剤
    水溶性造影剤は、体内で速やかに吸収され、尿を通じて排出されます。このため、甲状腺に与える影響は比較的少ないとされています。水溶性造影剤は、特に甲状腺機能に不安のある患者に対しては、安全性が高い選択肢とされています。

  2. 油性造影剤
    油性造影剤は、粘度が高く、より鮮明な画像を提供するため、特定の症例において有用です。しかし、体内に長期間残留する可能性があり、甲状腺機能に影響を与えるリスクがあります。特に、甲状腺機能低下症の患者に対しては、油性造影剤の使用は慎重に行う必要があります。

甲状腺機能が低下している患者への配慮

甲状腺機能が低下している患者がHSGを受ける場合、事前に甲状腺の状態を評価し、適切な治療を行うことが重要です。特に、チラーヂン(レボチロキシン)などの甲状腺ホルモン補充薬を使用している患者では、甲状腺ホルモンのバランスが安定していることを確認する必要があります。

HSGに使用される造影剤が甲状腺ホルモンの合成に影響を与える可能性があるため、当院では、造影剤の選択や検査後のフォローアップに特別な配慮を行っています。検査後に甲状腺ホルモンレベルが変動する場合、速やかに適切な対応を行うことで、患者様の健康を守ることができます。

当院での検査と治療の流れ

 

血液検査を通じて、甲状腺ホルモンのレベルを確認します。特に甲状腺機能低下症やバセドウ病の患者には、甲状腺の状態を詳細に評価し、造影剤の選択や治療方針を慎重に決定します。当院では、30分から40分で甲状腺ホルモンの結果が分かる機器を導入しております。

甲状腺機能と不妊治療の複雑な関係を考慮した上で、当院では産婦人科の医師と連携し、最適な治療を提供いたします。甲状腺機能に不安を抱える方や、不妊治療を進めたい方は、ぜひ当院にご相談ください。


監修者プロフィール

院長 山田 朋英 (Tomohide Yamada)
医学博士 (東京大学)

山田院長は、糖尿病・甲状腺・内分泌内科の専門医であり、東京大学で医学博士号を取得しています。東大病院での指導医としての経験や、マンチェスター大学、キングスカレッジロンドンでの客員教授としての国際的な研究経験を持ち、生まれ故郷の蒲田でクリニックを開院しました。

資格・専門性
日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・研修指導医
日本内科学会 総合内科専門医
豊富な臨床と研究の経験を活かし、糖尿病や甲状腺疾患における最新の治療を提供しています。

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