橋本病は完治できる?

橋本病ってどんな病気?

橋本病と診断されたとき、「この病気は完治できるの?」と心配になる方が多いかもしれません。橋本病は、甲状腺の働きが弱くなる病気で、体のエネルギーを作り出す力が低下してしまいます。このページでは、橋本病の治療と完治について、わかりやすく説明します。

橋本病は、甲状腺に炎症を引き起こす自己免疫疾患です。正式には「慢性甲状腺炎」とも呼ばれ、体の免疫システムが誤って甲状腺を攻撃し、炎症を引き起こすことで、甲状腺の働きが徐々に低下します。甲状腺は体の代謝やエネルギーを調整するホルモンを生成する重要な臓器であるため、橋本病によって甲状腺ホルモンの生成が減少すると、さまざまな症状が現れます。
 
橋本病は女性に多く見られ、特に30〜50代の女性がよく罹患しますが、男性や子供でも発症することがあります。遺伝的な要因や環境的な要因が橋本病の発症に関与していると考えられています。
 
橋本病は、早期には症状が現れにくいため、病気が進行するまで気付かないことがあります。典型的な症状には以下のようなものがあります:
- **倦怠感**:常に疲れを感じ、エネルギーが不足しているように感じることが多いです。
- **体重増加**:食事量が変わらないにもかかわらず、体重が増えることがあります。
- **寒がり**:寒さに対する感覚が強くなり、特に手足が冷えやすくなります。
- **皮膚の乾燥**:皮膚が乾燥し、かゆみが出ることがあります。
- **髪の毛の抜け毛**:髪の毛が抜けやすくなり、薄毛になることがあります。
 
甲状腺のホルモンバランスが乱れると、これらの症状が進行し、生活の質が大きく低下する可能性があります。

たとえるなら、橋本病は「エンジンがうまく動かなくなった車」のような状態です。このエンジンを修理して、元気を取り戻すために治療が必要です。
 

橋本病は完治できるの?

橋本病は慢性の自己免疫疾患であり、現時点では完治させる治療法は存在しません。一度発症すると、免疫システムが甲状腺を攻撃し続けるため、甲状腺機能が完全に回復することは難しいとされています。しかし、適切な治療を行うことで、症状をコントロールし、日常生活を快適に送ることは可能です。
 
橋本病の進行具合や症状の重さは個人によって異なります。初期段階では症状が軽い場合もありますが、甲状腺機能が低下してくると、甲状腺機能低下症(甲状腺ホルモンの不足)が進行し、体全体に影響を与えることがあります。橋本病は徐々に進行するため、早期に発見し、治療を開始することが重要です。
 
橋本病の治療の目的は、甲状腺ホルモンのバランスを保ち、症状を和らげることです。適切な治療を受けることで、多くの患者は症状をコントロールし、健康な生活を維持することができます。ただし、治療は一生続くことが多く、定期的な診察とフォローアップが必要です。


たとえるなら、壊れたエンジンを修理して、オイルを定期的に補充しながら走り続けるようなものです。完全に元の状態には戻らないかもしれませんが、問題なく動かすことはできるということです。

橋本病の治療方法

橋本病の治療は、主に甲状腺ホルモンの補充を中心に行われます。甲状腺ホルモンが不足している場合、ホルモン補充療法を行うことで、体内のホルモンバランスを正常に保つことができます。
 
1. ホルモン補充療法
甲状腺ホルモンの生成が減少している場合、レボチロキシン(L-チロキシン)という合成ホルモンを服用します。この薬は、体が自然に生成する甲状腺ホルモンと同じ働きをし、体内のホルモンバランスを調整します。レボチロキシンは、橋本病の患者にとって非常に効果的な治療法であり、ほとんどの患者がこの治療を通じて症状をコントロールしています。
 
薬の用量は、患者の甲状腺機能や体重、年齢に基づいて調整されます。定期的な血液検査を行い、甲状腺ホルモンのレベルを確認しながら、適切な薬の量を決定します。
 
2. 生活習慣の改善
橋本病の治療には、生活習慣の改善も重要です。特に、ストレス管理や適切な食事が症状の緩和に寄与します。ストレスは免疫システムに悪影響を与えるため、リラクゼーションや運動、十分な睡眠が大切です。
 
また、甲状腺に影響を与える栄養素(特にヨウ素やセレン)のバランスを考えた食事が推奨されます。特に、ヨウ素の過剰摂取は甲状腺に負担をかけるため、適切な摂取量を守ることが重要です。

治療中の注意点

橋本病の治療を行う際には、いくつかの重要な注意点があります。特にホルモン補充療法を受けている場合、薬の服用や生活習慣の見直しが治療の成功に大きく影響します。
 
1. 薬の服用を正しく行う
ホルモン補充療法では、レボチロキシンを毎日一定の時間に服用することが重要です。特に、朝の空腹時に服用すると吸収が良くなります。また、他の薬やサプリメントが甲状腺ホルモンの吸収を妨げることがあるため、医師の指示に従って服用間隔を守るようにしましょう。
 
2. 定期的な血液検査を受ける
橋本病は、甲状腺ホルモンのバランスが変化しやすいため、定期的に血液検査を行い、ホルモンレベルを確認することが大切です。検査の結果に基づいて、ホルモン補充薬の用量を調整することで、適切なバランスを維持できます。
 
3. ストレス管理を徹底する
ストレスは免疫システムに影響を与えるため、橋本病の症状を悪化させる可能性があります。定期的な運動やリラクゼーション法、適度な休息を取り入れ、ストレスを軽減することが治療にとって重要です。
 
4. 食事に気をつける
橋本病の患者は、甲状腺に負担をかける可能性のある食品を避けることが必要です。特に、ヨウ素を多く含む食品(海藻類など)は、過剰摂取すると甲状腺に負担をかけるため、適量を守ることが大切です。また、セレンや亜鉛といった栄養素は、甲状腺機能をサポートするため、バランスの取れた食事が推奨されます。
 


たとえるなら、エンジンが調子良く動いていても、定期的な点検やメンテナンスを欠かさないことで、車が長持ちするのと同じです。

当院でのサポート

当院では、橋本病の患者様に対して専門的な診療とサポートを提供しています。橋本病は完治が難しい病気ですが、適切な治療とフォローアップを行うことで、症状をコントロールし、日常生活を快適に過ごすことが可能です。当院では、患者様一人ひとりの状態に合わせた治療プランを提案し、長期的な健康管理をサポートいたします。
 
1. 専門的な診断
橋本病の診断には、血液検査を通じて甲状腺ホルモンのレベルや甲状腺自己抗体の有無を確認します。特に甲状腺刺激ホルモン(TSH)のレベルを測定することで、甲状腺機能の低下の程度を把握します。また、甲状腺の超音波検査を行い、甲状腺の大きさや形状の異常を確認します。
 
2. ホルモン補充療法の適切な管理
当院では、患者様の血液検査結果に基づいて、最適なホルモン補充療法を提案しています。定期的な診察と血液検査を通じて、甲状腺ホルモンのレベルを細かく管理し、患者様が最も効果的に治療を続けられるようサポートします。
 
3. 栄養指導と生活習慣の改善
橋本病の治療には、適切な栄養摂取や生活習慣の改善も重要です。当院では、栄養士が患者様に合った食事プランを提案し、生活習慣の見直しをサポートしています(現在栄養指導のサービスの提供を停止しております)。また、ストレス管理や運動指導なども行い、患者様の健康を全体的にサポートします。
 
4. 長期的なフォローアップ
橋本病は長期にわたる管理が必要な病気です。当院では、治療後も患者様が快適な生活を送れるよう、定期的な診察やフォローアップを行い、病状の進行や合併症の予防に努めています。
 
まとめ
 
橋本病は完治が難しい自己免疫疾患ですが、適切な治療を行うことで、症状をコントロールし、健康な生活を送ることが可能です。ホルモン補充療法や生活習慣の見直しを通じて、甲状腺ホルモンのバランスを保ち、病気の進行を防ぐことが大切です。
 
当院では、橋本病の患者様に対する専門的な診療とサポートを提供しており、長期的なフォローアップを通じて健康を維持できるようサポートしています。橋本病に関するご相談がある方は、ぜひ当院にお越しください。
 
 
## 監修者プロフィール  
**院長 山田 朋英 (Tomohide Yamada)**  
**医学博士 (東京大学)**  
 
山田院長は、糖尿病・甲状腺・内分泌内科の専門医であり、東京大学で医学博士号を取得しています。東大病院での指導医としての経験や、マンチェスター大学、キングスカレッジロンドンでの客員教授としての国際的な研究経験を持ち、生まれ故郷の蒲田でクリニックを開院しました。
 
**資格・専門性**  
- 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・研修指導医  
- 日本内科学会 総合内科専門医  
 
豊富な臨床と研究の経験を活かし、糖尿病や甲状腺疾患における最新の治療を提供しています。
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