甲状腺とたばこの関係とは?

たばこが甲状腺に与える影響とは?

たばこは、健康に悪影響を与えることでよく知られていますが、特に甲状腺に対しても深刻な影響を与えることがわかっています。甲状腺は、体の代謝やエネルギー消費をコントロールするために重要なホルモンを分泌する器官です。たばこに含まれる化学物質、特にシアン化水素やチオシアン酸塩は、甲状腺ホルモンの合成や分泌に影響を与えることが確認されています。

シアン化水素は、喫煙することで体内に取り込まれ、その後チオシアン酸塩に変換されます。このチオシアン酸塩は、甲状腺がヨウ素を取り込むのを阻害する作用があります。ヨウ素は甲状腺ホルモンの生成に欠かせない物質であり、ヨウ素の摂取不足は甲状腺の機能を低下させる原因となります。

また、喫煙によって甲状腺の機能が乱れると、甲状腺ホルモンのバランスが崩れ、代謝に異常をきたす可能性があります。これにより、甲状腺機能亢進症や甲状腺機能低下症が発生するリスクが高まります。

たとえるなら、たばこは「体の中でエンジンを汚す煙」のようなもので、甲状腺の働きを妨げることがあるのです。

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たばこが引き起こすリスク

たばこが甲状腺に与える悪影響は多岐にわたります。以下に、喫煙が引き起こす甲状腺に関連するリスクをいくつか挙げます。

1. 甲状腺機能亢進症のリスク
たばこを吸うことで、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の発症リスクが高まることが報告されています。バセドウ病は、甲状腺が過剰にホルモンを分泌する疾患であり、動悸、体重減少、手の震え、イライラ感、発汗過多などの症状を引き起こします。喫煙者は非喫煙者に比べて、バセドウ病の発症リスクが高くなることが示されています。

2. 甲状腺眼症のリスク
特にバセドウ病患者において、たばこは甲状腺眼症を悪化させる要因として知られています。甲状腺眼症は、眼球が突出し、視力低下や眼の乾燥、痛みを伴う疾患です。喫煙により、免疫反応が過剰に活発化し、甲状腺眼症のリスクが増大するとされています。実際、喫煙者は非喫煙者に比べ、甲状腺眼症を発症する可能性が3倍以上高いと報告されています。

3. 甲状腺機能低下症のリスク
たばこに含まれるチオシアン酸塩が、ヨウ素の取り込みを阻害することで、甲状腺ホルモンの生成が抑制されるため、甲状腺機能低下症のリスクも高まります。甲状腺機能低下症では、代謝が低下し、体重増加、倦怠感、寒がり、便秘などの症状が現れます。慢性的にたばこを吸うことで、甲状腺機能低下症のリスクが徐々に増加する可能性があります。

たばこをやめることで得られるメリット

たばこをやめることは、甲状腺だけでなく、全身の健康に大きなメリットをもたらします。特に甲状腺に関しては、以下のような効果が期待できます。

1. 甲状腺ホルモンのバランスが改善される
喫煙をやめることで、甲状腺ホルモンのバランスが改善される可能性があります。甲状腺がヨウ素を十分に取り込むことができるようになり、ホルモンの生成が正常化します。これにより、甲状腺機能亢進症や機能低下症のリスクが軽減されるだけでなく、代謝の安定化も期待できます。

2. 甲状腺眼症の進行を防ぐ
バセドウ病を持つ患者の場合、禁煙することで**甲状腺眼症**の進行を防ぐことができます。禁煙は、免疫系への影響を減らし、眼の症状を軽減させる効果が期待されます。特に、手術や放射線治療を受けている患者にとって、禁煙は治療の効果を最大限に引き出すために重要です。

3. 甲状腺がんのリスクを減らす
たばこは、甲状腺がんのリスクを高める要因でもあります。特に、長期間喫煙している場合は、そのリスクが高まることが報告されています。禁煙することで、甲状腺がんのリスクも軽減され、全体的な健康状態が向上します。

当院でのサポート

当院では、甲状腺疾患をお持ちの方や、たばこによる健康リスクを心配している方に向けた包括的なサポートを提供しています。禁煙による健康改善や、甲状腺の状態に合わせた治療計画を立て、患者様の健康をサポートいたします。

1. 甲状腺機能の検査
当院では、甲状腺の機能を詳細に診断するための血液検査やエコー検査を行っています。たばこが甲状腺に与える影響を評価し、早期発見・治療を行うために、患者様一人ひとりに合わせた検査を実施しています。

2. 禁煙支援プログラム
禁煙が甲状腺の健康にとって非常に重要であることを踏まえ、当院では禁煙支援プログラムも提供しています。医師によるカウンセリングや禁煙補助薬の処方、ライフスタイル改善に向けたアドバイスを通じて、患者様が禁煙を達成しやすい環境を提供します。

3. 継続的なフォローアップ
禁煙後も甲状腺の状態を継続的にモニタリングし、治療の効果や健康状態をサポートいたします。甲状腺疾患の治療においては、長期的なフォローアップが重要です。定期的な検査や診察を通じて、健康を維持するためのサポートを行います。

まとめ

たばこは甲状腺に対して多くの悪影響を及ぼすことが確認されています。特に、甲状腺機能亢進症や甲状腺眼症、甲状腺機能低下症のリスクを高めるため、甲状腺疾患の予防や治療の一環として禁煙は非常に重要です。たばこをやめることで、甲状腺の健康が回復し、全体的な健康状態も改善されます。

当院では、甲状腺疾患に関する診療や、禁煙支援プログラムを提供しています。喫煙により甲状腺に影響を感じている方や、禁煙を考えている方は、ぜひ当院にご相談ください。健康な未来のために、私たちが全力でサポートいたします。

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監修者プロフィール
**院長 山田 朋英 (Tomohide Yamada)**
**医学博士 (東京大学)**

山田院長は、糖尿病・甲状腺・内分泌内科の専門医であり、東京大学で医学博士号を取得しています。東大病院での指導医としての経験や、マンチェスター大学、キングスカレッジロンドンでの客員教授としての国際的な研究経験を持ち、生まれ故郷の蒲田でクリニックを開院しました。

**資格・専門性**
- 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・研修指導医
- 日本内科学会 総合内科専門医

豊富な臨床と研究の経験を活かし、糖尿病や甲状腺疾患における最新の治療を提供しています。

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